【国際司法裁判所の成立】
29、レフ・トルストイとアンリ・デュナン
十九世紀の半ば、ロシア帝国とオスマン・トルコ帝国の間に勃発したクリミア戦争(一八五三~五六)は、人道的かつスポーツのごとく柔和に行われ、一八五九年にサルディニア王国がフランスの支援を得てオーストリアに開戦したイタリア統一戦争も、クリミア戦争を越える残虐性を有するものではなかったが、戦場における場所を択ばぬ砲弾の大破裂が将兵にもたらす戦争の不可避的惨害が、奇しくも同じ生没年(一八二八~一九一〇)を持つ二人の人物の魂を揺り動かし、彼ら自身の戦争体験に基づく戦争と平和に関する考察を発表させ、彼らの名を歴史に刻んだ。
一人は、クリミア戦争中最大の激戦となったセバストーポリ要塞攻防戦に士官として参戦した経験を持つロシアの伯爵にして、「戦争と平和」を著した世界的文豪レフ・トルストイである。彼は、第一回ハーグ平和会議の直前、会議の開催者であるロシア皇帝ニコライ二世に「万国平和会議評言、一名軍備全廃宣言」なる書簡を送付し、
「この会議がその目的とするものは、平和の建設ではなくして、却って戦争の惨禍から人々を解放するところの唯一の手段、すなわち個人各自が軍事的殺人行為に参加することを拒否するという手段を人々から隔離することなのである。」
という痛烈な批判を会議に浴びせ、また国際仲裁裁判所の設置については、
「列国の間に該裁判所の判決を尊敬するに充分なる相互の信頼なかるべからず。而して国家間に斯くの如き信頼の有するあらば、吾人は遂に軍隊の必要を見ざるに至るべし。」
と述べ、下された判決は紛争当事国によって必ず尊重履行されるという国家間の深い相互信頼関係がなければ、裁判所による国際紛争の解決は戦争の根絶を実現しないことを予言した。
もう一人は、北イタリアのソルフェリーノ戦で負傷した兵士の救済事業に参加した経験を持つ国際赤十字の創設者の一人にして、一八六四年ジュネーブ条約と一八七四年ブリュッセル宣言の締結を推進し、一九〇一年に第一回ノーベル平和賞を授与されたスイス人のアンリ・デュナンである。彼は、一八九七年に発表した「極東の諸国民に告ぐ」の中で、
「まず第一に、私たちの祖先、すなわちヨーロッパ人たちが長い間、極東の人々に対して野蛮な行為をしてきたことを思い切って再認識しなければならない。このことを深い悲しみをもって率直に認めたい。しかし今、真に新しい時代が来たらんとしている。平和と正義の王国の到来に備えるため、世界中の平和愛好家たちが一堂に会しつつある。全ての温かい心、高尚な精神から協力を得ることを望む。それだからこそ、私たちはあなた方と互いに手を取り合って行きたいと思う。
出来るだけ早く、私たちは地球上の全国家の間で、永久仲裁条約を取り決めたい。そしてそれが出来るまで、国際仲裁裁判所に二国間の訴訟を付託することを制度化したい。一致点の見出せない二国間の紛争を公正に裁き得ると私は確信する。
国際仲裁裁判所の設置と平和のための諸国連盟を創る建議をして、あなた方と文通したい。友情による絆で結ばれたい。
日出づる国々の、高貴な心を持った全ての人々に訴える。私たちの兄弟愛の呼び掛けに貴重な後援、好意、支援の手を差しのべられんことを!」
と極東諸国民に平和への協力を求めた。さらに彼は、トルストイと時期を同じくして「ニコラス二世への建言」なる書簡を同皇帝に送付し、第一回ハーグ平和会議の成功を予測して皇帝を激励し、さらにこの建言の締め括りとして、
「来るべき二十世紀においては、列強の自己本位のわがままは通りにくくなり、まるで中世の貴族のように礼節が尊ばれ、エゴイズムが無法にも行われて来たようなことはできなくなります。」
と楽観的に予言したのである(1)。
この二人の対立の審判を人類の歴史に求めれば、二十世紀の歴史はトルストイの悲観的な予言に軍配を上げたと言える。
一九二四年のジュネーブ議定書が試みた恒久平和への努力によれば、国際仲裁裁判所と諸国連盟とが紛争当事国に判決を下し、あらゆる国際紛争を平和的に解決する制度の創造は、制度の利用を促進し且つ判決の履行を担保する強制力として、制度を無視し判決を尊重しない国家に対する制裁戦争を合法化せざるを得ず、また国家が自衛権を保持する必要性を完全に消滅させることはできないのである。
この歴史的事実によって証明された真理は、「戦争よりも合理的かつ有効な国際紛争を解決する手段を創造すること」は、戦争を消滅させ恒久平和を実現する為の必要条件であって、十分条件ではないということである。
日本には無数のサッカー少年がいる。従ってプロサッカー選手を志望する中学生がJリーグ球団とプロ契約を結ぶ為には、猛練習を積まなければならないが、彼が猛練習を積んでも将来Jリーガーになれるとは限らない。
戦争は国際紛争を解決する為の最終手段である。従って人類が人類という生物種を存続させつつ戦争を消滅させる為には、戦争よりも合理的かつ有効な国際紛争を解決する手段を創造しなければならないが、人類がこれを成就しても戦争が消滅するとは限らないのである。
恒久の平和と普遍の正義に支配される世界とは、あたかも灼熱の砂漠を彷徨する旅人の眼前に揺らめく瑞々しいオアシスの蜃気楼のごとく、戦乱に苦しむ人類によって、渇望され、追求されればされるほど人類から遠ざかる前人未到の境地なのである。
(1)吹浦【赤十字とアンリ・デュナン】一五一、一六〇、一九〇頁。
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