2007年12月31日

食糧自給率低下の原因は日本国人の意識 サツマイモ復興論

 バイオエタノールの生産と小麦の国際価格の上昇と支那大陸の環境汚染とオーストラリア大陸の旱魃のあおりを受けて、我が日本国では、食品の価格が軒並み上昇し始めた。

 所長は、この種のニュースを見聞する度に日本農業の再生を予感して喜びを抑えきれない。

 「特に養豚のごときは最緊要の事業である。アメリカでは年に六千万頭の豚を食用に供するといわれるが、もし日本国民が同程度に豚を食すれば、三千万頭を要するであろう。我等は日本農業の根本的再編成により、急遽豚の増殖に大努力を傾注し、迅速に国民食糧の自給、向上を計るべきことを提唱するものである。

 すなわち日本の水田約三百万町歩の三分の一は水がかり不良の水田である。これらを適当に畑作に転換し、甘藷、馬鈴薯、特に甘藷の増産を計る。仮に六十万町歩を甘藷、四十万町歩を馬鈴薯とし、現在の甘藷約四十万町歩、馬鈴薯約二十万町歩を併せ、近き将来に可能視される反収甘藷一千貫、馬鈴薯六百貫を実現しえたとすれば、水田をそのままにした今日の場合に比較して、増加すべき澱粉量は悠に米穀換算四千万石を超え、今日日本における主食不足量二千万石に倍する増収となる。

 しかしてこれらの大部分を澱粉製造に廻し、その粕類、屑いも、藁葉類を合すれば、種豚三百万頭、肥育豚三千万頭の基礎飼料を確保することができる。特に最近の研究によれば今日殆ど利用せずして放置している鉋屑、稲の籾殻等を酵素処理したものは豚の飼料として極めて好適であるといわれるから、これにより六千万石以上の濃厚飼料が追加せらるべく、飼料の見通しはいよいよ明るいということができる。

 況や養豚の振興によって恐らく百数十億貫の豚肥がえられ、六百万町歩の耕地は、今日よりも反二百数十貫の有機肥料の贈与を思慮されるが故に、農業生産力の全面的躍進が予期されるのみならず、肉豚三千万頭の大半を原料とするハム、ソーセージ等の食品加工業、或いは毛、皮革、血液、内臓等を利用する各種の工業は、日本農村工業振興の確固たる基盤となりうるものである。

 日本復興の最大の鍵点が食糧問題にある以上、国民食糧の自給と向上を一挙に実現し、しかも日本農業および農村工業の発展の根本動力たるべきこの方策のごときこそ、戦後日本の国力を傾けて実現に邁進すべき重大国策といわざるをえない。

 我等はこれによって今日の窮乏生活から起ち上がり、合理的経営による生産の大飛躍を極めて短期間になしとげ、アメリカにもまさる世界の富裕なる国家を建設する第一歩となさんと欲するのである」(人類後史への出発―石原莞爾戦後著作集

 サツマイモ(甘藷)は痩せ地でよく育ち、連作障害を起こさない優秀な作物である。でんぷん、ビタミンC、食物繊維を多く含み、いも焼酎(アルコール)や砂糖の原料となり、またサツマ豚の飼料となる。今日でんぷんは自然分解性プラスチックの原料である。

 さすがは野良将軍という異名を取った石原莞爾、サツマイモの特性を活かし、ただ単に食糧自給率を向上させるだけでなく、サツマイモから各種の食品加工産業を育成しようとしたのである。このサツマイモ復興論は現代日本にも通用するだろう。

 家庭菜園の不耕起栽培の名人である水口文夫さんによると、サツマイモは麦の刈り後で最もよく実り美味しくなるそうだから、休耕地の活用方法としては麦とサツマイモの二毛作が最適ではなかろうか。

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耕作放棄地で大麦栽培、地ビール生産 新潟県など地産地消に活用策(産経新聞2007.12.30)

 農業従事者の高齢化で増加する耕作放棄地を有効活用しようと、新潟県や新潟大などがプロジェクトチームを立ち上げて大麦を栽培、地ビールの製造販売したところ、思わぬヒット商品となっている。

 農林水産省も「ユニークな取り組みで地産地消につながる」と注目。関係者は「相次ぐ産地偽装で食品への信頼が揺らぐ中、正真正銘の地元産ということが評価されたのではないか」と話している。

 地ビール生産は、新潟県などが新潟市にある耕作放棄地の拡大防止と地域農業の担い手を増やすため、新潟大の福山利範農学部教授らが企画。平成18年8月にビールメーカー「新潟麦酒」(新潟市、宇佐美健社長)やJA越後中央、新潟市、大麦の栽培技術を指導する新潟県などでプロジェクトチームを結成した。

 メンバーは、後継者不足で拡大した新潟市西蒲区の砂丘地約33アールを農家から借りて土壌改良に着手。生い茂った松の木や雑草を抜き取り、土の中で堆(たい)肥(ひ)化させる作業を繰り返して、昨秋、大麦の種をまいた。

 大麦は暖冬の影響で生育が早まったものの、枝分かれした穂を新たに育成するなどして、今年6月に約775キロの収穫に成功。新潟麦酒が仕込み、12月にビール5000本(1本350ミリリットル瓶)と発泡酒6000本(同)を完成させた。

 同社の宇佐美社長は「麦の味と香りがしっかりしている」と手応えをみせる。ビール400円、発泡酒315円で、県内の一部小売店で売り出したが、陳列棚から即日完売が相次ぐ人気ぶりだった。「消費者からは味の良さだけでなく、収穫場所を知っているという安心感があったのではないか」(宇佐美社長)と分析する。

 福山教授は「砂丘地帯の麦栽培データがなく、手探りの研究だった。地ビールを特産品に育てていきたい」と意欲をみせており、来年は大麦の栽培面積を120アールに拡大し、プロジェクトを充実させる予定だ。別の関係者も「今回の成功で、畜産用飼料作りなど、食の安全と地産地消を意識した耕作放棄地の活用策が広がってきた。将来的には地場産の肉料理やチーズを商品化したい」と夢を描いている。

 ■耕作放棄地 1年以上の作付けをせず、今後も作付け見込みのない農地。病害虫の発生や周辺農地への荒廃化原因となる。農家の高齢化などで国内の耕作放棄地は年々増加傾向にあり、平成17年の農林業センサス調査では約38万ヘクタールと推定され、全農地の9・7%を占める。


 農地の私有と農業の経営が分離され、地方の中小の食品企業が小作法人として農家から農地を借り、農産物の生産と加工と販売を一体化して農業の経営を行い、農家に利益を配分する。これが日本農業の活路である。

 また休耕田の活用方法としてホンモロコの養殖が鳥取県をはじめ全国各地で盛んになりつつある。

ホンモロコ「全国区」に(産経新聞2007.10.4)

 絶滅が心配される琵琶湖の固有種で、関西では高級魚として知られる「ホンモロコ」の養殖法などを紹介する「第1回全国ホンモロコシンポジウム」が4日、鳥取市の県民文化会館で開かれた。全国一の養殖生産戸数を誇る鳥取県の生産組合が、食材として全国にPRしようと計画。午後には千葉や新潟、石川県などの研究者らが養殖の取り組みなどを報告する。最終日の5日は参加者が鳥取市内などの養殖場を見学する。

 ホンモロコはコイ科の淡水魚。春から夏にかけて産卵し、孵化(ふか)から約半年で体長10センチほどになる。味は淡泊で、川魚特有の臭みが少ないのが特徴。特に琵琶湖の100メートル近い深みにいる2、3月は骨が柔らかく、焼いて食べるとおいしい。

 琵琶湖では昭和49年に372トンの漁獲高を誇ったが、ブラックバスなどの外来魚による食害で平成16年には5トンにまで激減。同じく琵琶湖の当たり前の魚だったニゴロブナと並んで高級魚に位置するようになった。滋賀県は稚魚の放流や外来魚の駆除に力を入れるなど資源回復に懸命となっている。

 一方で、農家の後継者不足などで増えている休耕田を利用する養殖方法が注目され、全国に広がりつつある。休耕田を掘って水深約30~50センチの水をためれば養殖場が出来上がり、設備の経費がさほど掛からない。

 鳥取県によると、県内では15年から休耕田での養殖が始まり、18年度には生産戸数が54戸と埼玉県を抜き全国一に。18年度の生産量は6トンに上っている。


 いずれホンモロコは大衆魚として日本国の一般家庭の食卓に並ぶだろう。将来の養殖事業を立ち上げるための参考として観賞用の活ホンモロコを購入したい方は、もろこ屋さんに御注文ください。

 農家と小作法人が田んぼの端に常に水が溜まる深い溝を掘り、ここでホンモロコの養殖を行いつつ、残りの部分で農薬と化学肥料を使用しない不耕起冬期湛水コメ栽培を行えば、日本の田んぼは、コメとホンモロコとドジョウとタニシすなわち穀物と魚介類を育て、日本の食糧と食料の自給率の向上に貢献してくれるだろう。

 所長の味の記憶によると、タニシはそれほど美味しいものではなかったが、不耕起冬期湛水コメ栽培方法を広げ日本国の自然を甦らせる神の如き岩沢信夫さんによるとタニシからは良い出汁が取れるという。残りの肉と殻はニワトリの飼料になる。

 そして日本国人がサツマイモ、ホンモロコ、ドジョウ、鶏肉の天ぷらを腹いっぱい食べればわーい(嬉しい顔)、大量の天ぷら廃油が生まれる。これがディーゼル燃料となる。バイオエタノールと違い、天ぷら廃油を再利用するバイオディーゼルには無理と無駄がない。

 石原莞爾は日本の食糧不足の原因について次のように述べている。

 「それでは食糧不足の原因はどんなところにあるのだろうか。戦争中には消費が激増し、一方では生産が低下したことは当然であるが、平時でも色々の無駄と不合理がある。

 第一に消費者の濫費である。農作物の価格は工業生産物に比較すると格段に安い。自分で畑をやって見ると一本の菜、一さやの豆でも料理されるまでには大変な手数のかかるものであるが、買う段になると実にばかばかしいほど安いのである。従って消費者は平気で無駄にする。

 第二に輸送の際の消耗が随分大きい。動かす間の目減りもあるし、腐敗や変質による損失も少ないものではない。

 第三に農民の無駄食いも莫大なものであろう。百姓が一升飯を食うのはあたりまえとされたものである。栄養価の少ない副食物ばかり採るから米で補うのだろうが、それにしても非常な過食が農民の習慣となって、その結果胃病患者が驚くべき数に上っているという事は事実である。

 第四に値上がりに対する恐怖が生産者をして増産を手控えさせる。所謂豊作飢饉を充分味合わせられたので、折角努力して収量を増しても、うっかりすると生産過剰になり、ひどい目に合うかも知れないので、どうしても増産を抑えることに従来はなり勝ちであった。

 第五に農民の保守性も見逃すことが出来ない。一度失敗すれば一年間の労苦をフイにするのであるから、彼等が新しい技術を採り入れることに躊躇するのは一面無理のないところもあるが、このために生産増加の速度が実に緩慢である。(中略)

 こうした色々の問題が考えられるが、全国民が食糧を商品とすることをやめて、一家の食糧はその家族が自ら生産することになれば、上に挙げた無駄と不合理は全部なくなってしまう。更に我々は次のことも考慮する必要がある。

 現在我々はアメリカから食糧の一部を仰いでいるので、遥か太平洋の彼方の海員ストでさえも一々敏感に影響して来ている。もしも願わしからざる将来の戦争が万が一起こった場合を仮定すれば、たとえそれが短期で終結するにしても、徹底的に破壊された戦後の復興には恐らく数ヶ年を要し、交通通信も殆ど途絶するものと覚悟しなければならない。

 その間にあって我々は生命の綱たる食糧を一々他国の世話になっていたらどんなことになるだろうか。一体死活の鍵を他国に握られていて、一個の独立国として立ち、世界人類に貢献する新文化創造の大抱負をどうして出来ようか。

 そこで我等は国民皆農こそ八千万の同朋が四つの島で立派に生きて、他を侵さずに自ら足る生活を営み、日本の新しい建設を可能とする根本だと信ずる」(人類後史への出発―石原莞爾戦後著作集

 日本国人は料理を食べることを欲しても自ら食糧と食料を生産ことを好まない。そして食品を浪費する。必然的に日本国の食糧と食料の自給率は低下する。

 しかし食品価格が上昇すれば、日本国人は食品の浪費を止める。膨大な残飯を出さなくなる。そして日本国が外国から食糧を輸入できなくなれば、日本国人は否が応でも、休耕地、庭、ベランダ、ビルの地下と屋上を使い、食糧と食料の国内生産を行う。それは日本国の豊かな国土において十二分に可能である。

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ラベル:自然環境問題
posted by 森羅万象の歴史家 at 19:48| Comment(4) | TrackBack(1) | もろもろ時事評論 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
食料自給率の向上は絶対に必要ですね。地方との格差是正という意味でも農業再生は不可欠だと考えています。
よいお年をお迎えくださいませ。
Posted by saratoma at 2007年12月31日 21:55
あけましておめでとうございます。なるほどと思わせる記事ですね。私はどちらかというと大豆に目をつけていました。バイオエタノールの影響で大豆からトウモロコシに転作しているという話を聞いたものですから。豊作貧乏の件ですが、現代の科学技術力をもってすれば、燃料やプラスチックなどの工業製品に加工できますから、それで解決できるかと思われます。
Posted by 蔵信芳樹 at 2008年01月01日 09:48
あけましておめでとう御座います。所長さんのブログを心在る為政者に読んで頂きたいものです・・・
蔵信芳樹さんの指摘のあった大豆ですが、日本政府はこれをブラジル等から大量に買い付けるため現地の森林が急速に失われているそうです。こんな事を防ぐためにも農業の再生は急務でしょう。

Posted by なかむぅ at 2008年01月01日 14:31
 saratomaさん、蔵信芳樹さん、なかむぅさん、明けましておめでとうございます。

 今年も拙論に対する御指導を宜しくお願いします。
Posted by 便利屋こと所長 at 2008年01月02日 18:09
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