【国際司法裁判所の成立】
23、裁判所の管轄権
一九二〇年、法律家委員会によって作成された常設国際司法裁判所規程草案は、裁判所の管轄権の範囲において、中米司法裁判所設置条約よりもはるかに消極的であり、この裁判所において当事者となる資格を国家および国家という称号をとらなくても国際連盟の組成員たるもの(例えば英自治領およびインド)のみに与え、それ以外の団体および個人には与えなかった。またこの草案は、裁判所の管轄する紛争の範囲についても、原則として当事者間の合意によって裁判所に付託される紛争に限定したのである。
従って常設国際司法裁判所の管轄権は、紛争当事国間の同意を基礎として発生するものであって、この点において従来の仲裁裁判所と何ら異なる所はない。しかし法律家委員会の草案は、この裁判所に「司法裁判所」という名称に相応しい権限を或る程度において与えること欲して、次の各種の法律紛争については、紛争当事国の一方が他方との合意によらないで紛争を付託してきた場合にも、裁判所にこれを管轄する権限を与えようとしたのである。
A条約の解釈
B国際法上の何らかの問題
Cそれが立証されたならば国際義務違反を構成すべき事実の存在
D国際義務違反に対してなされるべき賠償の性質または範囲
この四種類の紛争は、連盟規約第十三条によって「一般的に仲裁裁判に付するに適する紛争」と明記されており、法律家委員会は、この連盟規約の規定をさらに進めて、この四種の紛争が連盟組成国間に生じた場合には、常設国際司法裁判所がコンプロミーを得ないまま紛争を管轄する強制管轄権(義務的管轄権)を持つことを明記しようとしたのである。
しかしこの委員会案が国際連盟理事国に付議された時、裁判所に強制管轄権を与える規定は削除された。連盟規約は既述の四種類の紛争を列挙してはいるが、それは、「一般的に」すなわち原則として仲裁裁判に付するのに適当な紛争という意味であって、必ず仲裁裁判に付すべき紛争として掲げているのではなく、従って法律家委員会案が連盟組成国に課する義務は、連盟規約が組成国に課する義務よりも重くなってしまう。これが、第一次大戦の戦勝国である常任理事国(英、仏、伊、日)に支配される理事会において、委員会案が退けられた理由であった。
理事会によって修正された裁判所規程草案が第一回連盟総会に付議された時、小国側によって裁判所の強制管轄権の復活案が要求され、大国案と対立したが、この対立によって裁判所規程が不成立に終わることを憂慮したブラジル代表がこの危機を打開する為に双方の妥協案を提出し、これが総会によって可決された。ブラジルの妥協案の内容は、一方において裁判所規程に加入する諸国は、加入それ自身によって既述の四種類の紛争に関して裁判所の強制管轄権に服する義務はないものとし、他方において、規程加盟国は四種類の紛争の全部または一部について裁判所の管轄権を承認する宣言をすることが許され、この宣言をした国同士の間に紛争が発生し、そしてこの紛争が、両当事国が共に裁判所に付託することを宣言した種類の紛争に該当する時には、当事国の一方の付託によって裁判所はこの紛争を裁判し判決を下す権限を持つというものであった。これが裁判所規程第三十六条となったのである。
<常設国際司法裁判所規程第三十六条>
裁判所の管轄は、当事者が裁判所に付託するすべての事件、および現行の諸条約にとくに規定されているすべての事項に及ぶ。
国際連盟の組成員及び連盟規約の付属書の中に名を掲げられている諸国は、本規程を付属書とする議定書に署名またはこれを批准するときか、またはその後の時期に、左に掲げた事項に関する各種の法律的紛争の全部または何れかについて裁判所の管轄を、同一の義務を受諾する他のすべての組成員または国との関係において、当然にかつ特別の合意なしに義務的であると認める旨を宣言することができる。
A、条約の解釈
B、国際法上の何らかの問題
C、それが立証されたならば国際義務違反を構成すべき事実の存在
D、国際義務違反に対してなされるべき賠償の性質または範囲
上述の宣言は、或いは無条件に、或いは多数国または或る国との間に相互条件の下に、或いは一定の期間を切ってなされてもよい。
以上のごとく四種類の法律的紛争に限って、裁判所に強制管轄権を与えようとする法律委員会の比較的遠慮した草案も遂に採用を見ず、裁判所の管轄権を認めることは規程加盟国の意思に任されることになった。従って裁判所が管轄する国際紛争は、以下の三種類に落ち着いたのである。
1、紛争の発生後に紛争当事者間にこれを常設国際司法裁判所に付託することについて合意ができた場合。
この付託合意をコンプロミーまたは特別協定という。
2、仲裁裁判条約によりまたは通商条約その他の条約中の仲裁裁判条項によって、一定種類の紛争はコンプロミーを結ぶ必要なくして常設国際司法裁判所に付託することが約束され、そしてこの種類に該当する紛争が条約締約国間に生じた場合。
この場合には当事者の一方の付託によって裁判所はこの事件を裁判する権限を持つ。もし当事者間にこの紛争が右の種類に該当するか否かの争いが生じた時は、裁判所がこれを決定する。
3、選択条項を受諾した国家間に紛争が発生し、この紛争が、両紛争当事国が共に裁判所の管轄権に服従することを認めた種類のものに該当する場合。
この場合にも当事者の一方の付託によって裁判所はこの事件を管轄する。もし当事者間にこの紛争が右の種類に属するか否かの争いが生じた時は、裁判所がこれを決定する。
現在普通に世界法廷の強制管轄権と呼ばれるものは、2と3の場合におけるコンプロミーを必要としない管轄権のことに他ならないが、連盟規約および裁判所規定は、裁判所に強制管轄権を与える手続き―司法的解決条約の締結または選択条項受諾の宣言の実行―を連盟加盟国に義務づける規定を有さないので、常設国際司法裁判所の国際紛争に対する管轄権は、国際連盟加盟国全部および国際社会構成員全部に対して効力を及ぼす裁判所固有の権限ではなく、あくまで紛争の発生前または発生後において裁判所に管轄権を与える手続きを自発的に執行した紛争当事国に対してのみ効力を及ぼすことができたのであって、裁判所の権限は極めて限定的であり、すこぶる脆弱であった。
従って常設国際司法裁判所の管轄権は、国内訴訟に比較を求めれば、司法裁判所のそれとは根本的の違いがあり、むしろ仲裁手続機関のそれに類似している。国内法において、仲裁手続機関の管轄権は紛争両当事者の意思を基礎として生じ、司法裁判所の管轄権は社会全体に施行される法規から生じるものだからである。もっとも常設国際司法裁判所が常設的なものである点において、国内の司法裁判所に類似するように思われるが、国内の仲裁手続機関にも常設的なものがあることを考えれば、この世界法廷の法律学上の正しい名称は常設(国際)仲裁裁判所となるはずであった。しかしこの名称は既に一九〇七年の第二回ハーグ平和会議によって真の意味において常設的ではない他の仲裁裁判所に与えられた為に、常設国際司法裁判所という名称が使用され、これを利用する国際紛争の平和的解決は司法的解決と呼ばれるようになったのである(1)。
(1)田岡【国際法Ⅲ】四十五~五〇頁。
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