国民のための戦時国際法講義 ８

戦時国際法を学ぶ意義の考察　８、武士道の復活


【戦時国際法を学ぶ意義の考察】


８、武士道の復活

　戦前に生まれ、教育勅語に象徴される戦前の教育を受けて育った我々の先祖は、数々の武勲偉功を成し遂げ、世界戦史に輝かしい足跡を刻み、世界各国に雷名をとどろかせてきた。のみならず彼等は、大東亜戦争に敗れ焦土と化した敗残孤影の我が国を経済技術大国として復興させたのである。これも世界史に特筆大書されるべき奇蹟であろう。今日我々が享受する日本の繁栄はひとえに彼等の努力の賜物にして彼等の遺産である。
　翻って戦後日本を見るに、戦後に生まれ戦後の教育を受けて育った我々は一体何を成し遂げたのであろうか？我々はこれから生まれて来る我々の子孫に何を遺せるだろうか？これを考えると筆者は慄然とせざるを得ない。我々は先祖の遺産を食い潰して子孫に「日本の滅亡」をもたらすだけではないのか。今のままでは我々は、ひたすら命を惜しんで祖国を滅ぼした愚かな卑怯者として末代まで汚名を残し、世界各国の人々に嘲笑されるであろう。これでは我々には、この世に生を受けたる意味、日本人として今を生きる価値がないではないか。
　それでは我々は一体何を為すべきか？答えは簡単である。先祖の生き様を模範として習い、先祖の踏みしめてきた道を歩み「武士」となることである。武とは戈（ほこ）を止める力すなわち抑止力であり、士とは一から十まで万学に精通する者である。

　我が国には、「人様を殺すなんて恐ろしいことをするよりも他人に殺された方がマシですから、うちは敵に襲われても、家族全員で戦わずに無抵抗主義に徹して、みな潔く殺される方を選びます」としたり顔で公言する国民がいる。落語家の桂南光である。この思想は一聞すれば高潔な究極の人道主義の様だが、実は、敵を殺さないことによって敵の虐殺行為を助長拡大させ、より多くの同胞を死に至らしめる卑怯な非人道主義なのである。時には人を斬るの武断が多くの同胞や無辜の民の命を救うのである。
　同胞の困難を考慮せずに自己の浅薄な似非人道主義に徹することのみに執着し、身を挺して敵と戦い、他の家族、同胞を守ろうという自己犠牲の敢闘精神、利他心すなわち私以外の「他」―他の範囲は自己の家族や友人から、彼らを包含する国家全体にまで伸縮する―の利益を図る心を全く欠いた桂南光など唾棄されるべき醜い愚民である。
　国民がそれぞれ利己心ではなく利他心（公共心）をもって困難に直面する他の存在の救援を図るようになれば、自分が困難に直面する時、他人から救援される。利他心こそが自他ともに幸福をもたらすのである。故に曽我物語いわく「情けは人の為ならず」と。

　また良心的な反戦平和主義の日本人が、日本有事の際、「戦争や軍隊は絶対悪であり、自分は国の為に絶対戦わない」という信念を貫徹する為、いち早く外国に逃亡し移住したところで無駄である。日本以外の国は明示的に国防の義務を国民に課しているのだから、日本人は地球上に存在する限り戦争からは逃げられないのである。そうであるならば我々日本人は、戦時国際法を学んで再び武士となり、国防軍を再建し、我々の先祖に習い勇気を振起して我々の祖国たる日本の為に戦い、そして日本の為に死のうではないか。
　人間はどのようにあがいても絶対に死から逃れることはできない。必ず死ぬ。従ってひたすら死を恐れることは徒労であり、結局のところ、人間が最良の人生を得るためには、より良き死を目指す以外にない。より良き死とは、世のため人のため国家のために死ぬこと、あるいは自分の子孫を始め後世の手本となるような立派な生き方をして死ぬことである。さすれば肉体は滅んでも、精神はこの世の人々の中に生き続け、魂は地獄への転落を免れてより良き再生を得るのである。これを自覚することこそ、日本の誇る武士道の真髄―武士道というは死ぬことと見つけたり―の本当の意味であり、武士道精神を身につけてこそ日本人は日本人たり得るのであり、より良き死を目指すことこそ無駄死をせず生き恥をさらさない唯一の道なのである。
　
　中国共産党は、彼らの主張によれば中国の一部である台湾が自由デモクラシーを深化させ名実ともに独立国家となることを絶対に許容できない。それらを認めれば中国共産党は中国人民とくに学生階級による中国の自由デモクラシー化運動、中国各省による北京政府からの分離独立運動を弾圧する名目を喪失し、一党独裁体制と共産中国が崩壊するからである。だから台湾で自由デモクラシー化が進み独立運動が高まれば、中国共産党は戦争手段に訴えて台湾を武力侵略しようとするであろう。この中台戦争ではアメリカは必ず台湾を救援するだろうから、アメリカの同盟国たる我が国も台湾を軍事的に支援し中国と交戦しなければならない。　
　現在、中国と台湾の間で高まっている軍事的緊張関係とは中国と日米台の間の軍事的緊張関係に等しく、我が国はごく近い将来に中共軍の弾道・巡航ミサイルと間違いなく民間人に偽装してすでに日本各地に潜入している中共軍の特殊工作部隊に日本国民が襲撃されるという危急存亡の秋（とき）を迎えるのである。
　従って我々は、これから生まれてくる我々の子孫の為に、共産中国の軍事的覇道主義の膨張から我が国と我が国の生命線たる海洋輸送路に位置する台湾とフィリピンを守り抜く為に何としても占領憲法の廃改、国防軍の再建を実現しなければならない。
　
　なぜならば自らの安全を自らの力によって守る意志を持たない場合は、いかなる国家といえども、独立と平和を維持することはできない。自ら守るという力量によらずに、きまぐれなる運にのみ頼るということになるからである。
　そして良き力を持つ国は、外敵の自国に対する侵攻を撃破抑止し得るのみならず、良き友にも恵まれるものである。「良き力」と戦時国際法を遵守する軍隊である。

　一九〇〇年五月二十八日、白蓮教の流れを汲む呪術拳教団の義和団が欧米列強による清国の生体解剖（分割競争）に憤激し、「扶清滅洋」のスローガンを掲げて決起し、北京の外国公使館と外国居留民を襲撃、六月二十一日、清朝廷はこれに乗じて列強各国に宣戦を布告した。これを北清事変（義和団事件）という。欧米七ヶ国と彼らの派兵要請に応じた日本から成る連合軍が清軍を撃破し天津と北京を占領した際、欧米各国軍は掠奪の限りを尽くしたが、連合軍主力の日本軍（第五師団）は一切非行を犯さず、治安の回復と維持に努めたのである。自国軍と外国軍の略奪強姦に慣れていた支那人は初めて見る軍隊の規律厳正な行動に驚愕し、「大日本順民」と記した日章旗を掲げて日本軍を歓迎し、挙ってその保護を求め、彼らは永く日本軍の仁愛あふれる善政を語り継いだのである。欧米各国軍から軍人の模範として尊敬された日本軍将兵の規律厳正なる勇戦はイギリス駐北京公使マグドナルドによってイギリス政府に報告され、イギリスは日本を信頼するに足る文明国と判断した(1)。
　かくして一九〇二年、イギリスは極東におけるイギリス権益をロシアとフランスから防衛する為、光栄ある孤立を放棄して日本との同盟締結に踏み切ったのである。もし日英同盟という後ろ盾がなければ、我が国がロシアとの開戦を決意し勝利を得ることは不可能であり、ロシアは満州から朝鮮半島を容易に征服、シベリア鉄道と満州朝鮮の各港との連結に成功し、我が国は巨大なランドパワー（陸運力、陸軍力）をシーパワー（海運力、海軍力）に転換したロシアの前に戦わずして屈服せざるを得なかったであろう。
　掃溜の白鶴、汚泥の蓮華のごとき北清事変における日本軍の遵法精神が日本民族を帝政ロシアの圧政下に呻吟する奴隷民族への転落から救い出したのである。
　またドイツ軍が一九四一年六月二十二日バルバロッサ作戦を発動し共産ロシアに侵攻した際、彼らが交戦法規を徹底的に遵守し、ソ連軍捕虜を厚遇し、占領地住民の慰撫と保護に努めていれば、二十世紀史上もっとも残虐非道な共産主義者スターリンに苦しめられていたバルト三国やウクライナの被圧迫諸民族は歓喜してドイツ軍を支援したばかりか、ソ連軍将兵も雪崩を打ってドイツ軍に投降し、ソ連共産党を打倒する戦争への参加を望み、ドイツ軍の勝利に大いに貢献したであろう。ソ連軍将兵の多くはスターリンが強行した農業国有集団化と工業力拡張そして大粛清によって親類や友人を虐殺されており、内心にスターリン率いる共産党に激しい憎悪と怨恨を抱き、復讐戦を期していたからである。
　阿南惟幾陸相は「道義は力なり」と喝破した。戦場における道義とは戦時国際法の遵守に他ならないと筆者は確信する。


（1)村上兵衛【守城の人】五〇二～六七一頁。石原莞爾【最終戦争論・戦争史大観】二六二～二六三頁。



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