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福沢諭吉の朝鮮地獄論(時事新報1885年2月26日 朝鮮独立党の処刑後編)
古代の歴史を閲して、いわゆる英雄豪傑なる者の所業を見るに、軍事にも政事にも動もすれば人を殺してほとんど飽くことを知らざるものの如し。はなはだしきは無辜の婦人、小児までも屠戮して憚る所なきその有様は、古人の武断はなはだ剛毅なるに似たれども、内実についてこれを視察すれば决してその人の強きが為にはあらずして、かえって弱きが為にしかるものなりと断定せざるを得ず。不開化の世の中に人を制するの方便も乏しければ一旦の機会に乗じて、他に勝つときはその機を空しゅうせずして殺戮を逞しゅうし、一はもって一時の愉快を取り、一はもって禍根を断絶して永年の安楽をたのしまんとするの臆病心より出るものなり。
往古、アレキサンダー王が戦争に幾万人の敵を殺したりといい、日本の源平の争に勝つ者は敵の小児までも刑に処したるが如き、その事例として見るべきものなり。アレキサンダー王と源平の諸将と甚だ勇なるが如くなれども、その実は敵をほしいままにしてまたこれを伏するの覚悟なきが為にかかる卑怯の挙動して残酷に陥りたるものと知るべし。
世の文明開化は人を文に導くというといえども、文運の進むに兼て武術もまた進歩し、人を制し人を殺すの方便に富むがゆえに、治乱の際たとい屠戮を逞しゅうすべきの機会あるも、時の事情に要用なる外は毒害の区域を広くすることなし。例へば戦争に降りたる者を殺さず、国事犯に常事犯に罪は唯一身に止まりて、父母妻子に及はざるのみかその家の財産さへ没入せらるることは甚た稀なり。例へば近年我国西南の役に国事犯の統領西郷南洲翁の如きその罪は唯翁一人の罪にして、妻子兄弟の類をなさず。今の参議西郷伯は現に骨肉の弟なれども、日本国中に之を怪しむ者なし。
けだし我政府が南洲翁の罪を窮めて殺戮を逞しゅうせざるは政府の力の足らざるにあらず、その実は文明の武力よく天下を制するに余りありて西南の変乱再ひ起るもまたこれを征服すべきの覚悟あればなり。一言これを評すれば、よく人を殺すの力あるものにして始めてよく人を殺すことなしといいてかならん。これを文明の強という。古今を比較して人心の強弱、社会の幸不幸、その差天淵もただならざるを知るべし。
されば彼の古の英雄豪傑が勇武果断にしてよく戦い、またよく人を殺したりというも、その勇武や唯一時腕力の勇武にして永久必勝の算あるにあらず、その果断や己が臆病心に迫られたるの果断にして、その胸中余地なきを証するに足るべきのみ。文明の勝算は数理に根拠して違ふことなく、野蛮の勝利は僥倖に依頼して定数なし。僥倖にして勝つものはその勝に乗して止まることを知らず、数理を以て勝つものは再三の勝を制すること容易なるがゆえに、その際悠々として余地あるもまたいわれなきにあらざるなり。
源平の事は邈乎たり、我々日本の人民は今日の文明に逢うて治にも乱にも屠戮の毒害を見ず、いやしくも罪を犯さざる限りはその財産、生命、栄誉を全うして竒禍なきを喜ぶの傍に、眼を転して隣国の朝鮮を見れば、その野蛮の惨状は我源平の時代を再演して或いはこれに過ぐるものあるが如し。我々は源平の事を歴史に読み絵本に見て辛うじてその時の想像を作るその際に、朝鮮の人民は今日これを事実に行うてかつて怪むものなしとは驚くべきにあらずや。日本なり朝鮮なり等しく是れ東洋の列国なるに、昊天何ぞ日本に厚くして朝鮮に薄きや。
けだし人盛なれば天に勝つの古言に違わず、朝鮮国民は数百年来支那の儒教主義に心酔して既に精神の独立を失い、またこれに加うるに近年はその内治外交の政事上においても支那の干渉をこうむって独立の国体を失い、有形無形百般の人事支那の風を学びてまた支那人の指揮に従い、自身を知らず自国を知らず日に月に退歩してますます野蛮に赴くものの如し。
その事実を計うれば枚挙にいとまあらずといえども、近日の一事件として我輩は朝鮮独立党処刑の新聞を得たり。よりていささか所感を記すこと次の如し。
去年十二月六日京城の変乱以後、朝鮮の政権は事大党の手に帰して政府はあたかも支那人の後見をもって存立し、政刑一切陰に陽に支那人の意に出るとのことはあまねく世界中の人の知る所ならん。
彼の国の大臣にして独立党の名ある朴泳孝、金玉均等の諸士はかねて国王陛下の信任を得てぬすみに国事の改革を謀り、一旦事を挙けて失敗し、俗にいわゆる負けて国賊なるものの身となりてその死生行方さえ分明ならず、現政府はこれを捜索することはなはだしきその最中、まずその党類を処分するとて本年一月二十八日、二十九日の両日をもって大に刑罰を行い、金奉均、李喜貝、申重摸、李昌奎の四名は謀叛、大逆、不道の罪を以て死刑に、その父母、兄弟、妻子は皆絞罪に処す。
李点乭、李允相の二名は謀叛不道の罪をもって西小門外に斬に処し、その家族の男は奴となし女は婢となす徐載昌、南興喆、崔興宗、車弘植、崔英植の五名は情を知って告げざる罪をもって当人のみ死刑に処して家族は無罪英昌摸は既に死後に付きその罪を論せず洪英植は孥戮の典を追施すまた金玉均、徐載弼、徐光範の父母妻子は二月二日をもって南大門に絞罪に処せらる。右は本月十六日時事新報の朝鮮事件欄内に掲載したるものなれば読者も知らるる所ならん。
そもそもこの刑戮は国事犯に起りたるものにして事の正邪は我輩の知る所にあらず、刑せられたる者と刑したる者といずれが忠心にしていずれが反賊にても我輩の痛痒に関するなしといえども、今の事大党政府の当局者がよく人を殺して残忍無情なるの一事においては実に驚かざるを得ず。
現に罪を犯したる本人を刑するは国事に至当のことならんなれども、右犯罪人の中車弘植の如きは徐載弼の僕にして、変乱の夜提灯を携へて主人の供をしたるまでの罪にして死刑を免れず。壮大の男子を殺すはなお忍ぶべしとするも、心身柔弱なる婦人女子と白髪半死の老翁老婆を刑塲に引出し、東西の分ちもなき小児の首に縄を掛けてこれを絞め殺すとは果していかなる心ぞや。なお一歩を譲り老人婦人の如きは識別の精神あれば身に犯罪の覚なきも我子、我良人がかかる身となりしゆえに我身もかかる災難に陥るものなりと、冤ながらもその冤を知りて死したることならんなれども、三歳五歳の小児等は父母の手を離るるさえ泣き叫ぶの常なるに、荒々しき獄卒の手に掛り雪霜吹き晒らしの城門外に引摺られて細き首に縄を掛けらるるその時の情はいかなるべきや、唯恐ろしき鬼に掴まれたる心地するのみにして、その索の窄りて呼吸の絶ゆるまでは殺さるるものとは思わず、唯父母を慕ひ、兄弟を求め、父よ母よと呼び叫び声を限りに泣入りて絞索ようやく窄まり、泣く声漸く微にしてついに絶命したることならん。
人間娑婆世界の地獄は朝鮮の京城に出現したり。我輩はこの国を目して野蛮と評せんよりも、むしろ妖魔悪鬼の地獄国といわんと欲する者なり。しかしてこの地獄国の当局者は誰ぞと尋ねるに、事大党政府の官吏にしてその後見の実力を有する者はすなわち支那人なり。我輩は千里遠隔の隣国におり、もとよりその国事に縁なき者なれども、この事情を聞いて唯悲哀に堪えず、今この文を草するにも涙落ちて原稿紙を潤おすを覚えざるなり。事大党の人々はよくも忍んでこの無情の事をなし、よくも忍んでその刑塲に臨監したるものなり。文明国人の情においては罹災の人の不幸を哀むの傍に、また他の残忍を見て寒心戦慄するのみ。
そもそも一国の法律はその国の主権に属するものにして、朝鮮にいかなる法を設けていかなる惨酷を働くも他国人のあえて喙をいるべき限りにあらず、我輩これを知らざるにあらずといえども、およそ各国人民の相互に交際するは唯条約の公文にのみ依頼すべものにあらず、双方の人情相通ずるにあらざれば修信も貿易もほとんど無益に帰するもの多きは古今の事実に証して明に見るべし。
しかるに今朝鮮国の人情を察するに、支那人と相投じてその殺気の陰険なること実に我々日本人の意想外に出るもの多し。ゆえに我輩は朝鮮国に対し条約の公文上にはもとより対等の交際をなして他なしといえども、人情の一点に至ってはその国人が支那の覊軛を脱して文明の正道に入り、有形無形一切の事につき我々と共に語りて相驚くなきの場合に至らざれば、気の毒ながらこれを同族視するを得ず。条約面には対等して尊敬を表するも、人民の情交において親愛を尽すを得ざるものなり。西洋国人が東洋諸国に対し宗旨相異なるがために、双方人民の交際微妙の間に往々言うべからざるの故障を見ることあり、今我輩日本人民も朝鮮国に対しまた支那国に対して自から微妙の辺に交際の困難あるを覚うるは遺憾に堪へざる次第なり。
北朝鮮労働党の残忍は事大党の残忍と同等以上で、北朝鮮はまさに李氏朝鮮(1392~1910)の再来である。2012年頃から韓国国民とくに若い世代の間で流行するようになった「ヘル朝鮮」は、韓国の李氏朝鮮への後退ぶりと韓国社会の生き辛さへの自嘲と絶望を意味する言葉である。したがって韓国人のヘル朝鮮論は福沢諭吉の朝鮮地獄論と同趣旨であり、福沢の朝鮮地獄論の正当性は遂に韓国国民によって認められたのである(笑)。
ならば我が日本国も、朝鮮独立党の処刑後編の要約にして朝鮮地獄論と対を為す「脱亜論」を実践し、北朝鮮化しつつある韓国と速やかに断交しなければならない。地獄と交わる国は地獄の妖魔悪鬼の侵入を招き自ら地獄に陥っていくのみである。それは過去と現在によって証明されている。
だから我が国は韓国と断交し、相互に交わらず関わらず妨げず、それぞれ独自の道を歩むべきである。それが東アジアで最も穏健で平和的な多文化共生社会である。植物の自然植生がその地域の土壌や天候に最も適合する植物の生態であるように、国の自生的秩序がその国の地理条件や人民に最も適合する国の生態である。
韓国が自ずから「大統領犯罪者制」を捨て李氏朝鮮=地獄国の再来である北朝鮮と同化するならば、我が国は決してそれを妨げてはならないし、それに同情してはならない。我が国が韓国の地獄化を阻止しようとしたり朝鮮人を地獄から救済しようとすれば、我が国の国力が地獄に吸い尽くされてしまう。
我が国は福沢諭吉の日本皇室論と脱亜論を実践し、ただひたすら我が国自身の自生的秩序を護り抜くこと、すなわち世界の国家元首の中で唯一のエンペラーである天皇陛下を戴く現存する世界最古の王朝で有り続けることに専念することこそ、我が国の過去の反省にして歴史の教訓であり、これが国際社会の多様性を維持するのである。
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