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維新前後仏教遭難史論(羽根田文明著/國光社出版部/1925年)の目次
〇前記
(一) 古來神佛混淆の状態
(二) 耶蘇教の傳來と其禁止状態
(三) 幕府時代の寺院僧侶
(四) 毀鐘鑄砲の勅諚
(五) 廢佛思想の遠因と近縁
(六) 水戸藩の廢佛毀釋(維新以前の廢佛)
(七) 鹿兒島津和野二藩の寺院處分(維新以前の廢佛)
(八) 維新以前の廢佛論
〇本記
(一) 明治維新の朝旨
(二) 明治新政と耶蘇教
(三) 明治新政と佛教
(四) 神佛分離に關する法令
(五) 日吉山王權現神改めの暴擧
(六) 京都地方の排佛状况
(七) 伊勢宇治山田の廢寺状况
(八) 三河大濱の騷擾
(九) 奈良地方の廢佛状况
(一〇) 富山藩の合寺状况
(一一) 宇佐八幡宮の寶物
(一二) 香取神宮の廢佛と本地佛
(一三) 松本藩の廢佛状况
(一四) 鶴ヶ岡八幡宮の廢佛状况
(一五) 伯耆大山の廢佛状况
(一六) 各藩管下の廢佛状况
(一七) 火葬禁止令と其解禁
(一八) 三個條の教憲と教職
〇後記
(一) 二勅會の再興
(二) 既廢事件の復興
(三) 信教の自由
(四) 教導職の廢止
(五) 國寶及び古建造物
(六) 謚號の勅宣文
(七) 明治教育と佛教
(八) 寺院境外上地の下戻
(九) 明治天皇と佛教
仏教歌人の羽根田文明は、廃仏毀釈運動の実態を叙述した後、本記を次のように結んだ。
維新の好運児として、最初に生れ出たる、惟神の大道も、その発達健全ならず、種々の支障に遇い、終に夭死するに至って、大道宣布は、民心を収攬すること能わず、全く失敗に終ると共に、彼が為に迫害を受け、十年間窮地に在て、悪戦、苦闘を続けたる、仏教は、事実上、最後の勝利を得たのである。自来、仏教は全く、政府の干渉を免れて各宗、各派共に、自宗の教義を講究し、自由に伝道、布教することになって、今日に及んだのである。
上来、記述するが如く、明治初年より、約十年間、仏教が(朝旨にあらざるに)政府者の迫害を受け、僧徒が官権の抑制に、困苦したる実況で、しかも予の見聞の及ぶ区域内に局られているから、日本全國の悲惨、状態を推知し、以て仏教、過去の遭難に鑑み、現在及び将来に対し、厳護法城の資糧に蓄積せられんことを切に庶幾うのである(仏教遭難史論238~239ページ)。
さらに羽根田は明治十七年に内務卿の通達により信教の自由が公認されたことを強調した後、帝國憲法を次のように評した。
既に、自葬の禁を解き、信教自由を公認したる上は、転宗、改式を政府に届出る要のないことは、勿論である。然らば、僧侶が檀徒に、信用を失う時は、離檀は素より、転宗、改式も、無届で自由に、之を為すが、之に反して、僧徒に学識、徳望あって、衆人の帰向する所とならば、檀徒以外に、幾多の信徒も、得ることが出来る。実に優勝劣敗の世態である。同二十二年、二月十一日、千載不磨の大典である憲法が発布となり、其の第二十八条に曰く「日本臣民は安寧、秩序を妨げず、又國民たるの義務に、背かざる限りに於て、信教の自由を有す」
徳川幕政時代より、因襲する所の信教の束縛も、時勢の風潮に由り、漸次に解き放され、茲に明確に、國民の自由信教を、保障せられて、全く自由信教の、國民となったのである。然れども、國家の安寧、社会の秩序を妨げ、又は納税、徴兵等、國民たるの義務に背きての信教自由でないことは本文の如くである(仏教遭難史論250~251ページ)。
枢密院議長の伊藤博文が枢密院帝國憲法制定会議において「神道は祖宗の遺訓に基づきこれを祖述するといえども、宗教として人心を帰向せしむるの力に乏し、我が國にあって機軸とすべきは、ひとり皇室あるのみ」と説明し、また伊藤博文の大日本帝國憲法義解が第二十八条を「國教を以て偏信を強うるはもっとも人知自然の発達と学術競進の運歩を障害する者にして、何れの國も政治上の威権を用いて以て教門無形の信依を制圧せむとするの権利と機能とを有せざるべし」と解説した。
伊藤博文の法理論は明治政府の苦い経験にも基づいていると理解した方は、ブロガーへ執筆意欲を与える一日一押人気ブログランキングをクリック願います。
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