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42、歴史に対する罪
もしIPR第六回太平洋会議議事抄録が東京裁判で徹底的に審議されたならば、西園寺やラティモアが喚問され、日米支に張り巡らされたソ連の諜報謀略網の実態がもっと早期により詳細に判明し、大東亜戦争の真実が白日の下に曝され、東京裁判は国際連盟によって侵略国と認定され連盟より除名されたソ連を責め裁く裁判となり、ソ連の勢力拡大に奉仕したアメリカ合衆国は面目を失ったに違いない。
以上の事態を阻止する為に、極東国際軍事裁判所は第六回太平洋会議議事抄録の法廷への提出を許さず、東京裁判昭和二十二年(一九四七)六月六日第二三二回公判に提出された「ソルゲ、スパイ事件の詳細発表/ニッポン・タイムス一九四五年十二月二十四日」、「ゾルゲ、スパイ事件/オットー・D・トリスチヤス東京報告一九四三年レイノルーヒッチコック出版」を却下したのであろう(4)。
東京裁判インド代表判事のラダビノッド・パルは、法廷によって却下された被告弁護側の証拠資料について次のように評価した(5)【パル判決書上】五六二~五六四頁。
「一般に第三者の意見または信念はぜんぜん証拠とはなり得ないものであって、したがって受理され得ないものである。証人等は事実だけすなわち、かれら自身が見聞したことだけを陳述すべきことになっている。述べられた事実にもとづいて自己の結論または意見に達することは判事および陪審員の職務である(中略)。
しかしながら法廷が正確な判断を下す立場にないという種々の場合がある。すなわち審理に関係のある問題が、普通の経験または普通の知識の範囲外である場合、あるいはある科目の特別の研究、またはこれに関する特別な経験を必要とする場合がこれである。このような場合には、特別な研究、訓練、又は経験を必要とする事項について、専門家の助力が必要となってくるのである。こういう場合には法廷して適当な決定に達せしめるため、専門家の証拠を受理するのである(中略)。
まえに述べた原則に準拠して、法廷は本件の審理中に提出を試みられた数多くの証拠を却下したのであるが、これらの証拠というものは、裁判官の意見では、たんに、その作者たちの抱いていた意見を証言しようとしたものであった。たとえばこの理由をもとに本法廷は前駐日アメリカ大使グルー氏が、関係ある時期中に、中華民国また日本に起っていた諸事件の同氏自身の判断を示している陳述を却下したのである。法廷は同様に、ロバート・クレーギー卿、レジナルド・ジョンストン卿、ジョン・パウエル氏およびその他の人々の意見をも却下したのである。法廷はまた当時の日本の政治家たちの意見、太平洋問題調査会による当時の事情、事件の評論、その他それに類似したものを証拠として受理することを拒絶した。
本官の意見としては、本件の状況に鑑みて、この原則をまえに述べた事件に無差別に適用したことは不正当であったと信ずる。本官は、日本によるある特定の行動が侵略的であったかどうかを決定するうえにおいて、法廷が必ず当面することとなる難点をすでに指摘しておいた。もしこの目的のため裁判官の求められているところが、ある特定の状況が実在していたか又はある特定の事件が実際に起ったかというのではなく、自身の仮定のもとづいて行動していた人々が『善意をもって』その状況の存在、または事件の惹起を信じ、その所信にもとづいて妥当に行動したかという点を調べることであるとしたならば、日本を含む国の政治家、外交官、記者、および類似の人々のその当時における見解、意見、および信念の持つ証明力は大であると本官は判断する。
このような見解、信念、意見は、ある状況の実在または係争中のある事件の発生を証明するというのではなく、当時一般に抱かれていた意見を確証し、ひいては本件に関係のある人々の見解ならびに信念の『善意』を確証する目的にたいしては、本件に関して極めて価値があり、また肯綮にあたった証拠的事実であるというのが、本官の意見である。」
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