石原莞爾ほど多くの学者、評論家により評伝の対象として取り上げられている軍人はいません。しかし敗戦後の石原莞爾の思想を知る人は極めて少数です。
「大東亜戦争の敗北によって夢を破られた我等は、ここに翻然と目覚め、最終戦争に対する必勝態勢の整備は武力によるべきにあらずして、最高文化の建設にあることを悟ったのである。
狭小なる国土に圧縮された日本が、民族の総力を傾注して内容一変せる新国土を建設し、土地、資源の侵略を欲せざる国家をここに実現するならば、これ即ち戦争を必要とせざる文化の創造である。
かかる新日本の建設のみが、よく日本当面の諸問題を根本から解決するのみならず、人類文化の最大転換期に際し、最も輝かしき貢献をなす所以である。」
石原莞爾は、日本再建策として、都市解体・農工一体・簡素生活を挙げました。都市を解体することによって、都市の弊害(資源の浪費、環境の悪化、慢性病の蔓延、道義の退廃、文化の偏在、農村の荒廃)を解消し、国民皆農(国民がみな兼業農家となる)を実現して、農工業を融合発展させ、簡素生活を実現し、五感を支える直感を蘇生し、科学・政治(五感)と信仰・宗教(直感)を一致させ、人類の新時代を切り開こうというのです。
「近代の文化生活といわれるものは、自然を征服して人為的となり、人間は自然を離れてかえって自然に逆襲される有様となった。この方向を突き進めば人類は滅亡するほかはない。我々は舵を転じて新時代の簡素生活をを創造しなければならない。
簡素生活は断じて野蛮生活に帰ることではない。自然と人為を完全に調和し、真に人類の生命を永遠ならしむる生活―科学と芸術が渾然融合した生活である。科学は複雑な自然の中に簡単な法則を探り、芸術は森羅万象の中に単純直截な生命を把握しようとする。その本質はいずれも簡素なものでなければならない。人類の真の生命は簡素生活によってのみ無限の成長を期待することができる。
複雑な人為生活に偏した民族は肉体的病弱と精神的堕落の道をたどって滅亡していった。人頭獅身の生活が人間の理想的生活である。剛健な身体は簡素生活から生まれる。
これからの社会を支配すべき協同精神は謙虚な人格の上に成立するであろうが、この人格は簡素生活によって初めて養われる。」
石原莞爾の敗戦後著作集、人類後史への出発(石原莞爾平和思想研究会/展転社)

石原莞爾いわく、
「日蓮聖人の御指示によって想像するに、科学は仏智を得てますます進歩し、天変地異は驚くべき原子力を駆使する科学的設備の完成により、低気圧・気流の調整・緩和等が行われて、おのずとから整理される一方、完備せる堤防・防風林・貯水池・疎水等と妥当なる山林・治水政策により、暴風雨・旱魃等も人類に残虐なる危害を加えるものでなくなるであろう。かくて吹く風枝をならさず、雨つちくれを砕かず、自然の恩恵と人間の努力のうるわしい調和をたのしむ農中心の生活が人間生活の基盤となるのである。
自然と人生のなごやかなる調和は、信仰と科学、宗教と政治の見事な偕調でもある。のびのびと育つ大森林、悠々と流れる江河を擁して近代科学の粋をこらした住居があり、部落があり、町があり、田園があり、工場がある。一日数時間の勤務時間には、健康である限り、老いも若きも、男も女も、あるいは工場にあるいは農場に、あるいはその他の職場に就いて整備された機械をたくみに使用しつつ、すべてを忘れて働く。天皇も皇太子も、大臣も画家も学者も文士も、朝のひとときは畑に立って土に親しむ。
洗練された自治能力と合理的な社会制度と、高度な協同生活により、充分豊富な自由時間には、ギリシャ彫刻にみる以上のたくましい健康美を白日のもとにふんだんにまきちらしつつ、あるいは古典の研究に、あるいは美術の創作に、あるいはスポーツに、あるいはダンスに、各々欲する趣味にしたがって心のままに人生を楽しむ。物資は有り余るほど豊かで人は分配の不公平にわずらわされず、ただ人智の進歩にしたがってよきものの創作に絶えざる工夫がほどこされ、研究が行われるばかりである。
急性病は科学の進歩によって克服され、慢性病は自然にかえった正しい人間生活によって絶滅し、戦争・内乱・病気・罪悪等の不祥の災難から解放された人々は、もはや苦志を知らなくなる。完全に生活そのものとなった南無妙法蓮華経の信仰は、人生社会の一切に生き生きと脈うち、この時人々は、人類世界を楽しもうとして湖水のほとりや、山の岩かげなどに姿をみせる美しい天人たちを見ることであろう。
もちろん、発達せる航空機の力により、世界は一都市の如く縮小し、自然の愛情に結ばれた民族の混血は、次第に地球人類を一民族としてゆくであろう。一方、人智の進歩は、微視科学を発達せしめて生命の神秘を探究し、巨視科学を発達せしめて他の天体の事情を理解し、やがて青空のかなたへロケットを送る宇宙航空路の発見とまで進むかも知れない。人類史の最後をかざるべき末法一万年の最高文明時代の輝かしい世界は、今まさにその待望の扉をひらこうとしているのである。」
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