日本の名目GDPは、1997年は515兆6442億円、2010年は479兆1725億円で、13年間で約36兆円のマイナス成長。
日本の実質GDPは、1997年は500兆664億円、2010年は539兆8807億円で、13年間で約39兆円のプラス成長。
1997年から2010年まで我が国の経済は慢性的なデフレである。つまり供給が過剰で需要が不足し物価が持続的に下落すると、名目GDPが減っても、実質GDPは増えるのである。
従って我が国のTPP加盟の効果を示す本当の経済指標は我が国の名目GDPの増減値であるのに、内閣府はTPP加盟の場合の実質GDPの伸び幅(1年2700億円、GDPの0.054パーセント)のみを示して肝心の名目GDPの伸び幅を示さない。示さないのは、示せないのだろう。おそらく名目GDPの伸び幅は1年2700億円もない、ゼロ以下だからだろう。日本のTPP加盟は確実にデフレ・スパイラルを加速させる。
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我が国がTPPに加盟した場合の経済効果は、10年累積で実質GDP2.7兆円、1年2700億円程度、GDPの僅か0.054%である。つまり経済効果は、ほぼゼロである。この理由は明瞭で、TPP対象分野に外資が参入し、ただでさえ不足している日本国の需要を内資と奪い合えば、日本国内で、1997年~2010年より、もっと激烈で凄惨な競争が起き、合成の誤謬が進んで、日本経済が痩せ細るからである。
子供を持つ数多の両親が子供の将来に備えて節約と貯金に励むことは、慈愛に満ちた親心の現れであるが、それらが合成されると不景気の要因となり、両親の仕事と子供の将来が危うくなる。
数多の企業が、激しい生存競争に勝ち残るために、品質を高めつつ生産コストを下げる合理化を重ね、人件費と物品費を下げ、高品質低価格の魅力的な商品を作り出すことは、企業の真当な経営努力であるが、それらが合成されると不景気の要因となり、高品質低価格の魅力的な製品さえも満足に買えない貧乏人が増える。給料が減れば消費が減る。自動車メーカーが高性能の新型車を発売しても、それを買えない若者が増えるのである。デフレは豊饒の中の貧困を拡大させる。
いま日本国のTPP加盟を推進している構造改革派は、この10年のあいだ、総需要を喚起する政策を頑なに拒絶し続け、「規制緩和を行い自由な競争を促進すれば、新しいビジネス、高付加価値の製品、画期的なサービスが生まれ、輸出が伸び、日本経済は成長する」と喧伝してきた。しかし実際には日本の輸出産業は現在よりは有利な立場(円安、2009年の麻生内閣の退陣時でさえ1ドル94~97円であった)にあったにもかかわらず、デフレが続いた。
公共事業(政府調達)を受注できなくなった数多の土木建設会社が余剰の土木建設力を活用し、農業分野に参入することは、止むを得ない土木建設会社の生き残り策であるが、それらが合成されると供給過剰となり農産物の値崩れが起きる。この現象は昭和恐慌のとき浜口内閣が緊縮財政を行い公共事業を減らした実際の結果であり、農業従事者は更なるデフレ地獄に陥った。昭和恐慌の前から、日本のコメ農民は安い朝鮮米の内地流入に苦しんでおり、日本内地の農業は慢性的なデフレ不況に喘いでいたからである。
日本のTPP加盟後、安いアメリカ米が日本国内に入ってくれば、それが高くて美味しい日本米より少し不味くても、貧乏人は安いアメリカ米を買うだろう。貧乏人が愛国心を持ち日本の農業従事者のことを心配しても、豊饒の中の貧困が拡大するなかで、背に腹は代えられない、買わざるを得ない。熾烈な価格競争を繰り広げている外食チェーンも同様である。誰も貧乏人や外食チェーンを責められない。
アメリカの穀物メジャーは儲けるが、日本のコメ農業は壊滅的な大打撃を被る。供給者は同時に消費者である。コメ農業従事者が没落すると、彼らに財やサービスを提供している他業種の人々-コメの消費者-もまた業績悪化に苦しむ。コメ農業の壊滅はコメを買う消費者にも損害を及ぼすのである。コメ農業を生き残らせるためには、コメ農業従事者に対する所得補償を増やさなければならない。
鈴木宣弘東大教授によれば、コメと牛乳・乳製品や畜産物などコメ以外の農産物に対する補てんと1兆円近くに及ぶ関税収入の喪失分の別途手当てには、毎年4兆円の財源確保が必要となるという。農水省は3兆円だと言っている。3~4兆円の財源をどのように捻出するのか。復興増税にTPP増税を重ねることは、日本経済を痛めつけ、政府の掲げる「デフレ脱却」に反する。通貨発行益を使うなら今すぐ1年3兆円の通貨発行益を確保して景気対策を打てばいい。
<通貨発行権を活用する経済対策>
貨幣の製造及び発行の権能は政府に属する。財務大臣は、貨幣の製造に関する事務を、独立行政法人造幣局に行わせている。また、貨幣の発行は、財務大臣の定めるところにより、日本銀行に製造済の貨幣を交付することにより行う。
日本銀行は貨幣を日銀券に交換し、一般会計内に設置された貨幣回収準備資金に納入、年度末には税外収入として政府の一般会計に繰り入れられる。ここで貨幣の額面と硬貨鋳造費用との差額は政府の貨幣発行益となる(500円硬貨の貨幣発行益は457円)。
政府が500円硬貨を増産して通貨発行益を稼ぎ、1年1兆円、10年10兆円の新規財源を確保し、5兆円を東北復興費に上乗せ、4兆円を我が国の次世代戦闘機i3FIGHTER(カウンター・ステルス・アイファイター)を開発と調達に投入すれば、後者の波及効果は8.3兆円、雇用創出は24万人。
24万人の雇用創出は消費を増やし、航空機産業以外の様々な業種の人々にもビジネスチャンスを運んでくる。
通貨発行益を活用する我が国の次世代戦闘機i3FIGHTER(カウンター・ステルス・アイファイター)の開発と調達はリスクゼロであり、これだけで我が国は絶対確実にTPP加盟の経済効果(10年累積で実質GDP2.7兆円、1年で2700億円程度、GDPの僅か0.054%、つまりほぼ0%)より大きい経済効果を得られるのである。
さらに日本政府が残りの1兆円を、市場価値を喪失したスギ林の伐採と、マテバシイやトチノキ、ビービーツリーいった蜜源植物の植樹に投入すれば、日本国民を悩ませるスギ花粉症の被害を減らし、なおかつ花粉交配者のミツバチの繁殖を促し、日本農業の再興を助けることができるのである。
・ビービーツリー(和名イヌゴシュユ-真夏に無数の白い小さな花を付け大量の花蜜を出します。安く仕入れ採種して育苗すると商売になります。詳細はこちら)
繰り返すが、我が国がTPPに加盟した場合の経済効果は、10年の累積で実質GDP2.7兆円の増加、1年で2700億円程度、GDPの僅か0.054%、つまりほぼ0%である。この内閣府の発表は、TPP加盟推進論者の主張を焼き払ってしまった。
「アジアの経済成長を取り込める」とか「雇用を増やすことができる」とか「デフレ脱却に役立つ」とか、すべて虚偽である。
すでにTPP推進論者は、虚偽、詭弁、憶測、妄想、恫喝をもって反対論者を押し切ろうとする厚顔無恥モード(朝日新聞社の狂気と小林よしのりの狂気)に入っているので、誰も彼らを説得させることはできない。彼らとの論戦は無意味であるから、TPP反対論者は、我が国がTPPに加盟した場合の経済効果は、10年の累積で実質GDP2.7兆円の増加(名目GDPの増加値は不明)、1年2700億円、GDPの僅か0.054%、つまりほぼ0%であるのに、TPP加盟には数多くのリスクがあると訴えていくのみである。
<関連ページ>
・歴史を振り返れば、円高デフレ不況を克服したのは、高橋是清の円安誘導策と内需拡大策-昭和恐慌の研究
・失格エリートたちが支配する日本の悲劇
日本のTPP加盟はデフレ脱却に失敗した構造改革路線の悲劇的な延長であり、この10年の失敗を繰り返すのみと思う方は、ブロガーへ執筆意欲を与える一日一押人気ブログランキングをクリック願います。
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http://soumoukukki.at.webry.info/201110/article_4.html
ご指摘のとおり、実質GDPと名目GDPの双方を公表すべきですよね。できないのでしょうけれども。