第二条 皇帝は左右両院において議決せる日本政府の歳出入租税国債諸般の法律を批准す
(第三条 日本政府の歳出入租税国債及諸般の法律は元老院国会院において之を議決し天皇の批准を得て始めて法律の効あり)
しかし第二条註解は次のように解説する。
凡(すべ)て治国に係わるの事は尽(ことごと)く皇帝陛下の行わせたまう所なるを以て両院において議決する所のものは皇帝陛下の批准を経るにあらざれば法律たるの効なきものとす英国憲法の如き亦然り。
交詢社の私考憲法草案も帝国憲法と同様に議会に対する天皇の拒否権(べトー)を認めるのである。
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【伊藤博文の帝国憲法義解第六条解説】
第六条 天皇は法律を裁可し其の公布及執行を命ず
恭て按するに、法律を裁可し式に依り公布せしめ及び執行の処分を宣命す。裁可は以て立法の事を完結し公布は以て臣民遵行の効力を生ず。此れ皆至尊の大権なり。裁可の権既に至尊に属するときは其の裁可せざるの権は之に従うこと言わずして知るべきなり。裁可は天皇の立法に於ける大権の発動する所なり。故に議会の協賛を経と雖も裁可なければ法律を成さず。
蓋し古言に法を訓みて宣となす。播磨風土記云。「大法山 今名勝部岡 品太天皇応神天皇於此山宣大法故曰大法山」と。言語は古伝遺俗を徴明するの一大資料たり。而して法律は即ち王言なることは古人既に一定の釈義ありて謬らざりしなり。
(附記)之を欧州に参考するに、君主法案の成議を拒むの権を論ずる者其の説一に非ず。英国に於ては此れを以て君主の立法権に属し三体(君主及上院下院を云う)平衡の兆証とし仏国の学者は此れを以て行政の立法に対する節制の権とす。
抑々彼の所謂拒否の権は消極を以て主義とし法を立つる者は議会にして之を拒否する者は君主たり。此れ或は君主の大権を以て行政の一偏に限局し(フランス)或は君主をして立法の一部分を占領せしむる(イギリス)の論理に出る者に過ぎず。
我が憲法は法律は必ず王命に由るの積極主義を取る者なり。故に裁可に依て始めて法律を成す。夫れ唯(ただ)王命に由る故に従て裁可せざるの権あり此れ彼の拒否の権と其の跡相似以て其の実は霄壌(しょうぞう)の別(空と地ほどの差異)ある者なり。
播磨風土記、「大法山(おおのりやま)今の名は部の岡勝、品太(ほむだ)の天皇(すめらみこと)、この山に大法(おおのり)を宣(の)り給いき。故(かれ)、大法山という。」
交詢社の私考憲法草案の規定する天皇の拒否権はイギリス直系であるのに対して、帝国憲法の規定する天皇の拒否権は応神天皇の故事より復元した「法律王命主義」に則しており、私考憲法草案より日本的に改良されたものといえよう。
天皇は帝国議会衆貴両院の協賛(過半数の同意)をもって立法権を行使するがゆえに、帝国議会の否決に遭えば法律を制定できない(第5条、第37条)。帝国議会は法案を可決し天皇の裁可を経て法律を制定できるが故に、天皇の拒否権に遭えば法律を制定できない(第5条、第6条、第37条、第38条)。これが国家元首たる君主と立法機関たる議会との間に生じる権力の相互抑制効果であり、権力の均衡状態である。
帝国憲法の下では公選議院が、大政翼賛会に譬えられる小沢民主党のごとき反日左翼的政党に制圧されたとしても、一党独裁政治は成立しないのである。
<関連ページ>
・世界の名著バジョットのイギリス憲政論
・歴史を偽造する魑魅魍魎の跳梁跋扈-日本国憲法有効論の弊害1
・法戦不能に陥る日本の悲劇-日本国憲法有効論の弊害2
・欠陥国会議員が行う憲法改正の危険性-日本国憲法有効論の弊害3
・旧宮家の皇室復帰を実現する法理論と政策集
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