【不戦条約と極東国際軍事裁判】
31、正戦論
正戦論とは、戦争を「正当な戦争」と「不当な戦争」とに区別し、正当な原因に基づく戦争だけを合法と認める理論である。これは義戦論とも呼ばれる。
正戦論の起源は古く、春秋戦国時代の支那では、諸子百家が諸国を遊説し、義戦論を唱えていた。孔子の説く義戦は、天子が不逞の諸侯を征伐する戦である。荀子の説く義戦は、理を乱す暴者を懲らしめ社会の害を除く戦である。兵学家の尉繚子の教えは、兵は凶器であり争は逆徳であるから、兵を用いて争を起こすには相当の理由がなくてはならず、王者の暴国を伐つには、人を愛し理を尊重する仁義に基づき、これを始めて行うべきである、というものであった。
正戦論を初めて科学的体系の形式をもって展開した人物は、聖アウグスティヌス(三五四~四三〇)である。その後、正戦論は、中世キリスト世界に成立した、哲学、神学、法学、自然学など諸学問を包摂するスコラ学を経て、戦争研究に従事した神学者に伝えられ、グロチウスを始めとする近世の国際法学者に受け継がれた。
中世から近世の始め(十六世紀)に至るまで国際法学の先駆者達によって提唱された正戦論は、次のごとき理論であった(1)。
「戦争はそれ自身罪悪ではなく、場合によっては正しく且つ義務的である。新約聖書の中には総ての暴力を禁止するがごとき感を与える若干の箇所があるが、実際はキリスト教の教義はかかる精神を含まない。
しかし戦争が許されるのは権利を維持する為に絶対に止むを得ざる場合に限られる。戦争は防御戦と攻撃戦とに分かつことを得るが、防御戦すなわち外国が先んじて宣戦し又は武力行動を開始せる時に、武力をもってこれに応えることは如何なる場合においても正当なるに反して、攻撃戦は甚だ限られた場合にのみ正当となる。他国が我が国に向かい宣戦せざるにかかわわらず、我が国より先んじて戦争を開始することを正当ならしめる原因は、一言にして云えば、敵国が我が権利を侵害する行為を為せることであるが、しかし権利の侵害が戦争の正当なる原因となる為には次のごとき条件を備えねばならない。
1、侵害が持続性を持つこと。
外国の侵害行為が我が国の抗議によって直ちに中止せしめることを得、又は償いを提供せしめ得るものなる時は、戦争の原因と為すことを得ない。外国が我が国の正当なる抗議にもかかわらず、侵害を継続し又は賠償を為さざる場合にのみ、この国家に対する攻撃戦の開始は正当となる。
2、戦争が損害回復の為の唯一の手段であること。
もし他の手段により、例えばより高き権威者の裁判を仰いで権利を回復する道ある時は戦端を開くことを得ない。
3、外国の違法行為によって生ずる損害が重大であって戦争の醸すべき惨禍と調和するものなること。
不法行為の継続はもとより被害国の不幸であるが、この不幸を排除せんが為になされる戦争が個人・国家・全人類により重大なる不幸となる場合がある。より重大な不幸を避ける為には、より小さな不幸はこれを忍ぶべきである。」
以上のごとき「正当な戦争」に関する研究は、中世の神学者および教会法学者に端を発して、近世の戦争法学者に重視され、十七世紀のグロチウスも、彼の著書「戦争と平和の法」全三巻のうち第一巻と第二巻を「戦争の正当原因の規律(jus ad bellum)」の研究に捧げ、第三巻においてのみ、戦争の開始から終了までの手続きや、戦闘の手段・方法の禁止事項など戦争を遂行する為のルールである「戦時法規(jus in bello)」を取り扱ったのである。
しかし十八世紀が開幕すると、この傾向は全く逆転し、戦争の正当原因の規律の研究は衰退の一途をたどり、十九世紀の終わりから第一次欧州大戦直前までの国際法学に至っては、これを全く放棄し、戦争研究を戦時法規に限り、国際法は、「国家が如何なる場合に戦争を為すことを許されたりやの問題を説かず、又説くことを得ず、ただ国家は如何にして戦争を為すかを説くのみ」となった。正戦論は国際法の領域から完全に除外され、戦争の正・不正や起因は全く問題にされず、あらゆる種類の戦争が肯定され、あらゆる戦争において交戦国双方に対し平等に適用される戦時法規の違反のみが問題視されるようになったのである。この考え方は「無差別戦争観」と呼ばれる。
あらゆる種類の戦争を否定し、平和の多様性を考慮することなく盲目的に平和を愛し、平和に絶対至高の価値を置く戦後日本の反戦平和主義は、さしずめ無差別平和観と呼ばれるべきであろうか。
十九世紀末に正戦論を国際法から一旦消滅させた要因は、正当な戦争と不正な戦争との関係はコインの表裏に似て、両者を区別することが中々容易ではなかった上に、国際法家が机上で戦争を二つの種類に区別する理論の確立に成功したところで、すべての交戦国が自国の戦争政策を正当化する戦争の渦中で、正戦論に照らし合わせて、いずれの交戦国の主張が真実か、いずれの戦争政策が正しい戦争に相当するかに関して拘束力のある客観的判定を下す機関が存在しなかった為に、正戦論が実際の国際政治へ適用されることは甚だ困難であり、正戦論は無意味な机上の空論に堕落するより他なく、戦争の発生の抑止には貢献しなかったことであった(1)。
「理論においては、国際法は戦の依って起れる所以の原因を決定せねばらなぬ。別語にて之を言えば、国際法も国内法と均しく、救済を訴えるの基たる不法を構成する所のものを明確に画定せねばならぬ。且つ救済を求める国には特殊の権利を与え、不法を為せる国をば特殊の不利の下に立たしむることに依りて不法の行わるることを抑止するの道を執るも道理ないではない。
けれども如何に法律が交戦国の一方に不法を行えりと宣言し得るとするも、その宣言を強制するにおいて無力ならば、之に刑罰の性質を与えんとするも試みて無駄である。もし法律に服従するとせば、そは任意の服従たるの外に出でない。一国が不正当に干戈を執りたるに際し、その行為に対する刑罰に服従すべしと期待するも無駄である。随って国際法は戦因の正不正を離れ、単に戦を以て交戦当事国が任意に訴え得る所の関係なりと為し、国際法自身は専らその関係より生ずる影響を規定することに当たるというの外途ない。
是において凡そ交戦国は双方共に同一の法律的位地に立ち、随って均等の権利を有するものとして認められるのである。」(ホール)
そして正戦論をめぐる以上の環境は、連合国憲章下の国際社会においても基本的に変化していない。それを証明する有力な証拠は、連合国憲章第三十九条と、二〇〇一年のアメリカの九・一一事件以降、連合国の盟主たるアメリカがテロの撲滅という大義を掲げアフガニスタンとイラクに対して戦争を果敢に遂行し、日本政府がアメリカに対して積極的に軍事協力しているという事実と、イラクが大量破壊兵器保有の疑惑を有していただけで外国に武力攻撃を実施していなかったことを挙げて、ただひたすら日米両政府に侵略者とか戦争犯罪人という野卑な罵声を浴びせるだけで、戦争を全く止められない日本の無力にして無意味な反戦平和運動であろう。
(1)信夫【戦時国際法講義1】三九二~四〇〇頁。田岡【戦時国際法】六頁。
国際法史上「自衛権」という言葉が初めて使用されたのは、一八三七年イギリス軍がイギリス領カナダのネイビー島に集結中の反乱軍を掃討する為に、反乱軍が武器の輸送に利用していたアメリカの汽船カロリン号を撃沈した時のことである。この事件では、カロリン号はカナダとアメリカの間を定期的に往来していただけで、アメリカ側に特段の非がなかった為に、イギリス政府は自衛権という言葉を持ち出してカロリン号の撃沈を正当化したのである。
これ以後、国際法上の自衛権は、国内法上の緊急避難権に類似する権利を意味する言葉として使用され、第一次欧州大戦では、ドイツはシュリーヘンプランを発動しベルギーの中立を侵犯した際、これをドイツの自衛権であると主張した。しかし大戦後、各国政府の公文書中に現れた自衛権の意味は大きく変わり、正戦論における「防御戦の権利」とほぼ同一の権利を意味するようになった。すなわち自衛権とは外国の武力攻撃、武力侵入に対して、戦争権もしくは戦争に至らざる平時の武力行使をもって反撃する権利である。田岡【国際法上の自衛権】四十一、一五一頁。
この自衛権の概念は、連合国憲章に継承されたが、二十一世紀の世界情勢によって再び変化を余儀なくされるかも知れない。
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