【不戦条約と極東国際軍事裁判】
30、一九二八年パリ不戦条約
一九二四年のジュネーブ議定書の目的は、拘束力のある判決を下す国際機関に全ての国際紛争を必ず付託してこれを解決する義務を諸国家に課し、戦争の全廃を実現することであったが、議定書は効力を生じないまま消滅してしまった。しかし第一次欧州大戦の巨大な戦禍を経験した諸国民は、戦争を廃止する国際条約の締結を求めて止まなかった。
この国際的な反戦平和世論に満足を与える為に、一九二八年八月二十七日パリで署名された有名な国際条約が不戦条約である。この戦争放棄に関する条約は、締結を主導したアメリカ国務長官ケロッグとフランス外相ブリアンの名を冠せられてケロッグ・ブリアン条約とも呼ばれる。
<不戦条約(戦争放棄に関する条約)>
第一条
締結国は、国際紛争解決の為戦争に訴うることを非とし、且つ相互の関係において国家の政策の手段としての戦争を放棄することを其の各自の人民の名に於いて厳粛に宣告す。
第二条
締結国は、相互間の起こることあるべき一切の紛争又は紛議は、其の性質又は起因の如何を問わず、平和的手段に依るの外之が処理又は解決を求めざることを約す。
信夫淳平博士の説によれば、第二条の平和的手段とは、開戦に至らざる迄の一切の行為を含み、平時封鎖、平時占領など開戦(国家間の交戦状態の開始)の意思を伴わず戦争に至らざる平時の武力行使(1)を包含しており、不戦条約がそれらの戦争に至らざる強制手段をも禁ずるものとは考えられないという(2)。これに対して田岡良一博士の説によれば、平和的手段とは、外交交渉、仲裁裁判、第三者の調停のごとき紛争当事国の互譲妥協を基礎とする紛争解決方法であって、当事国の一方が物質的損害や精神的苦痛を与える措置を講じて他方を屈服させ、自己の要求を貫徹する手段はすべて非平和的(非友好的)な強制手段の範疇に入れられ、不戦条約は戦争と戦争に至らざる強制手段との両方を原則禁止するものであるという(3)。
戦前から戦後にかけて活躍した、日本の偉大なる二人の国際法家の見解が真っ向から対立したこと自体、不戦条約が明確な立法意思(正当解釈)を欠く、いい加減な条約であった証拠なのだが、あらゆる戦争は国際紛争解決の為の手段であり、また国家の政策の手段であるから、この条約の第一条は締結国にすべての戦争を放棄させるものである。
しかし不戦条約には、戦争を犯罪と見るとか罪悪をもって論ずるとかの文字はなく、条約違反国の政治指導者に課せられるべき刑罰規定も設けられてはいない。仮に、飲酒が合法である二十一世紀の日本で、二〇〇X年八月十五日、「朝日新聞を叩き潰す掲示板」の住人の全員が靖国神社に会合し、ここに祭祀される軍神に対して、朝日新聞の廃刊を祈願し、これが成就するまで全員の禁酒を誓約したものの、翌日には、龍井榮侍が禁を犯して酒を飲んでしまったとしよう。龍井榮侍は住人の方々から神々との契約違反を非難され、朝叩板を追放されるであろうし、また神罰を受けるかも知れない。しかし龍井榮侍は朝叩板の住人間の契約違反者であって刑事罰を受けねばならぬ犯罪者ではない。
これと同じく、不戦条約違反とは、せいぜい国際社会における従来の適法行為を当時の政治的都合によって敢えて為さないという国家間の契約に違反するだけのことで、決して国際犯罪を構成するものではなかったのである(4)。
ケロッグがブリアンに提案した条約の原案は、自衛権を除外しない絶対無条件の戦争放棄条約であったが、フランス政府は、この条約は適法の自衛権の行使ならびに国際連盟規約、ロカルノ協定、そのほか他国との同盟条約による義務の履行を妨げるべきではないと主張した。ケロッグはこれを斟酌し、さらに一九二八年四月二十八日、アメリカの国際法協会の演説において、次のように明言し、イギリス外相チェンバレンの全面同意を得た。
「不戦条約アメリカ草案中には何ら自衛の権利を制限し若しくは毀損するものなし。該権利は各主権国固有のものにして一切の条約中に黙示的に包含せらるるものなり。各国民は如何なる時に於いても又条約の規定如何に拘わらず攻撃又は侵入に対して其の領土を防衛するの自由を有し且つ右国民のみが自衛の為戦争に訴うるを要する情勢に在るや否やを決定する権能を有す。もし右国民にして正当なる理由を有する場合に於いては世界は之を是認し其の行動を非とせざるべし。然れども放棄し得ざる此の権利を条約に於いて明示的に承認せんとするは侵略を定義せんとするに当たり常に遭遇すると同様の困難を惹起するものなり。右は同一の問題を反対の方面より観たるものなり。如何なる条約の規定も自衛の自然の権利に何等附加すること能わざるに依り条約を以て自衛権の法律的概念を規定するは平和の為利益に非ず。蓋し無法なる者に取りては協定せられたる定義に適合する様に事件を捏造すること極めて容易なるを以てなり。」
続いてイギリス政府は、不戦条約の調印に先立ち、五月十九日付の在ロンドン米国大使大使宛公文書中において、以下の声明をもって不戦条約の適用範囲から事実上エジプトを除外したのである。
<イギリス政府の留保声明>
「国家の政策の手段としての戦争の放棄に関する第一条の文言に顧み、本官は世界の特定地域に於いては其の康寧および保全が我が国の平和および安全に対し特殊且つ緊切なる利害関係を構成するものなることに付き閣下の注意を喚起せんとす。イギリス政府は従来是等地域に対する干渉を容認し得ざることを明にせんと努力し来たのである。攻撃に対し是等地域を防護することはイギリス帝国に取り自衛の一手段である。新条約が此の点に付きイギリス政府の行動の自由を阻害せずとの明確なる了解の下に之を受諾するものなることを明にし置くの必要がある。アメリカ政府も亦同種の利害を有し他国が之を無視するを非友誼的行為と看做すべき旨を宣言(註、モンロー主義)したることあるに依りイギリス政府が其の立場を斯く明にするは即ち米国政府の意向と見解とを表明するものと信ずるのである。」
これに対するアメリカ政府の見解は、自衛権は自国の判断によってこれをエジプトにてもペルシャ湾にても、その他特殊利害関係の繋がる地域に広く及ぼすことを得るもので、当然本条約の適用より除外することが可能であり、故にアメリカもイギリスと同様にカリブ海の諸国、パナマ運河、その他の方面に関しても、いやしくもモンロー主義の擁護のためとあらば自衛権の名において、本条約の拘束を受けずに自由に行動するができる、というものであった。
アメリカ政府はこれを上院外交委員会に説明し、同委員長ボラーも自衛権には「アメリカが干渉の形式において支那、中米、その他の方面に武力を用いるの権を包含す」と述べ、この説明の下にアメリカ上院は、不戦条約への大統領の批准に同意を表したのであった。かくして不戦条約は米英政府から広範な留保条件を付され、あらゆる種類の戦争のうち自衛戦争を積極的に容認することとなったのである。換言すれば、修正された不戦条約は、戦争を自衛戦争と非自衛戦争とに区別し、前者を肯定し、後者を条約の締約国に放棄させたのである。
これは即ち「正戦論」の復活である。
(1)平時の武力行使を規律する固有の国際法は存在せず、平時において国家の軍隊が、外国の違法行為に対する報復措置として外国領土の一部分を保障占領し又は外国の港湾や沿岸を封鎖する場合、或いは自国の領空、領海を保全する為に、臨検、捜索、拿捕を行う場合は、一般的には戦時法規が準用される。
(2)信夫【戦時国際法講義1】五三七頁。
(3) 田岡【国際法上の自衛権】一六一頁。
(4) 信夫【戦時国際法講義1】六九七頁。小堀【東京裁判日本の弁明】一七三頁。
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