2009年12月02日

神道の起源を教えてくれる不死と性の神話-吉田敦彦

 亡くなられた荻野貞樹先生は、名著歪められた日本神話のおわりに次のように書いている。

「本文でも触れたように、私は少年のころから日本神話を楽しんできましたが、それを楽しめなくさせるもろもろの理屈が、どうも嘘くさく感じられて仕方がありませんでした。もやもやしながら長い時をすごしてしまったのですが、そのうち大林太良先生や吉田敦彦先生の御著書、また本居宣長、デュメジル、エリアーデ、レヴィ・ストロースなどを読みふけることになって、気持ちもだんだん晴れてきました。」

 所長も不死と性の神話(吉田敦彦著)を読み大いに納得できた。

・日本が誇る美少女フィギュア豊満な乳房を揺らす古代の王女も大地母神信仰の名残かもしれないわーい(嬉しい顔)と思う方は、ブロガーに執筆意欲を与える1日1押人気ブログランキングをクリック願います。

不死と性の神話(吉田敦彦著/青土社2004)の目次

第一章 不死の神話と洪水伝説「ギルガメシュ叙事詩」と『旧約聖書』
1 不死を求めたギルガメシュの冒険の旅
2 旧約聖書に物語られた、天地の始まりから大洪水とノアの箱舟までの話
3 真四角な箱の船に乗って大洪水から逃れたウトナビシュティムの話

第二章 性と豊穣の神話「ギルガメシュ叙事詩」と『旧約聖書』
1 エンキデゥとシャムハト
2 アダムとエヴァ
3 ギルガメシュとイシュタル
4 先史時代のヴィーナス像
5 洞窟壁画の表現するもの
6 ヴィーナス像の変化
7 ふたりの女神
8 豊穣をもたらす聖婚
9 旧約聖書の雅歌に歌われた聖婚
10 大地母神から竜へ
11 大地母神から娼婦へ
12 聖婚から人間の始祖の男女の結婚

第三章 三つの宝物がつなぐ東西の神話
1 スキュタイの三つの宝物
2 三つの宝と祭司・戦士・生産者の働き
3 日本神話の三種の神器
4 高句麗建国伝説の宝物
5 ケルト神話の宝物

第四章 母神信仰に見る神道の源流
1 縄文の土器
2 縄文中期のヴィーナス像
3 農耕(芋栽培)の始まり
4 記紀神話の中の縄文信仰
5 世界の作物起源神話
6 出産する女神
7 火の神の出現
8 記紀神話の中の縄文の女神たち
9 縄文の聖なる館
10 死と再生の祈り

第五章 海の恵みの神話
1 母神としてのヴィーナス像と縄文土偶
2 生命の源・水
3 水に始まる、世界のさまざまな創世神話
4 海から美の女神の誕生と文化の起源
5 海の女神たちとゼウス
6 海の助けで琉球の王になれた思金松兼の話
7 海からの奇跡の種子とスクナビコナ
8 オホタニヌシが繰り返し得た、海からの助け
9 山幸彦のホヲリが受けた海からの助け
10 ウガヤフキアヘズ・カムヤマトイハレビコ・ホノニニギに対する海の貢献
11 昔話に語られた海の力-日本
12 昔話に語られた海の力-ヨーロッパ

あとがきと注


 今から3万5千年前ぐらい前に始まった後期旧石器時代に、現代人の祖先にあたる太古の人類は、動植物を生み育む大地そのものを母なる神と崇め、大地母神を実際に子を孕み生む妊娠中の女性に擬人化した。それが先史時代のヴィーナス像と呼ばれる女神像である。

 この後期旧石器時代の大地母神信仰は新石器時代にも受け継がれ、人類の拡散とともに世界の各地に様々な女神を生み出した。

 そのうちの一人がギルガメシュ叙事詩に登場するメソポタミア神話の女神イシュタル(イナンナ)であり、次の挙げる詩は、シュメール人の王様がイシュタルと結婚する祭りの際に歌われたものである。

女神「私のために、私の陰門を、私のために、うず高くもり上がった小丘を、私-処女である私のために、誰がそこを耕してくれるのでしょう?
私の陰門は水分で潤った土地―そこを私のために、私-女王である私のために、誰がそこに牡牛を放牧してくれるのでしょう?」

人々「おお気高い貴婦人よ、あなたのために王がそこを耕すでしょう。あなたのために、王であるドゥムジがそこを耕すでしょう。」

女神「私の愛する人よ、どうか私の陰門を耕して下さい!」


 男性をタネ、女性をハタケというのは大地母神信仰の名残かもしれない。このギルガメシュ叙事詩のメソポタミア神話が旧約聖書に強い影響を与えたのである。

 我が国では縄文時代の土偶の特徴が先史時代のヴィーナス像とぴったり一致しており、縄文時代の我が国にも大地母神信仰があった。そして女性に擬人化された縄文時代の女神たちが日本書紀と古事記の日本神話に受け継がれるのである。

 神道の源流は大地母神信仰であり、我が国の神道は太古の人類の素朴な信仰の性格を色濃く受け継いでいるといえよう。これはおそらく我が国が日本神話に直結する皇室を戴く世界最古の王朝であることと無関係ではないだろう。だから11月23日の勤労感謝の日は、やはり天皇と日本国民が君民一体となって秋の収穫を神々に感謝する新嘗祭でなければならない。これが日本の国柄に相応しい祭日である。

 もういいかげん日本人がGHQの尻馬に乗って、日本の神話や神道を誹謗中傷したり、GHQの勘違いの産物である神道指令と占領憲法の政教分離規定にもっとらしい理由を付けて、これを根拠にして新嘗祭の復活や靖国神社の参拝を妨害したりするのは、止めるべきである。
 政治家が靖国神社に参拝し、勤労感謝の日を新嘗祭に改めたところで、一般国民が参拝や祭祀を強制される訳でもなく、誰の信仰の自由をも侵害しないのだから。

 歪められた日本神話の解説どおり、政治的プロパガンダは、日本の神話ではなく、記紀を貶めてきた戦後の左翼系古代史学者の学説であったことを教えてくれる比較神話学の名著が不死と性の神話です。

<関連ページ>

・大地母神信仰の名残かもしれないわーい(嬉しい顔)日本が誇る豊満な乳房を揺らす古代の王女

李登輝さんの靖国神社参拝 政教分離は有害無用

・戦前の神道と帝国憲法 後学のメモ 靖国参拝はローマ教皇庁も認めた慣行 米ジョージタウン大 ケビン・ドーク教授

・外国人を感激させるCOOLJAPANのペンダントから和心の溢れる冬期限定銀光雪華首飾「家を守る」守り神-幸運のヤモリ。


日本らしさの根源-日本の神話と神道を大事に守りたい方は、ブロガーに執筆意欲を与えるにほんブログ村 書評・レビューをクリック願います。
↓↓↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

【関連する記事】
posted by 森羅万象の歴史家 at 23:50| Comment(4) | TrackBack(1) | 所長が選ぶ名著と迷著の紹介 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです。
私は真の政教分離は宗教法人に対する税制優遇の
撤廃だと思います。国内のカルト勢力が数の力でもって政治に介入するのを防ぐことこそ、真の政教分離ではないでしょうか。ところで、イシュタルは豊穣の女神であると同時に、戦いの神でもあったわけでして、そう考えると日本における農業の衰退は実は平和憲法が原因なのかもしれません。
Posted by 保守主義者 at 2009年12月03日 11:30
 保守主義者さん、そうそう、織田信長の時代から日本の政教分離は宗教の自由を保障する代わりに宗教団体の政治介入を認めないというものだったのに、戦後の日本では、政府及び政治家が神道形式の皇室関連行事へ参加したり靖国神社に参拝することのみが左翼勢力によって政教分離違反に問われるのです。

 占領憲法の政教分離の起源が神道指令で、左翼勢力がGHQ民政局の子供だからでしょうね。
Posted by 森羅万象の歴史家をめざす所長 at 2009年12月03日 22:39
吉田先生らの神話学者を元にした神話解釈こそが、正しい解釈として我等の日本神話もできるのだと思いますね。
小堀桂一郎先生が書かれていたように、神話を史実説で持っていくのは、やめておいたほうが適切です。
小堀先生が指示する萩野先生こそはその点を強調したわけですが、残念ながら小林よしのりさんには通じませんね。
何でこんなに彼はぶれちゃったんだろうと、正直がっかりです。男系男子の皇室ではない方法を肯定する漫画の書き方がかなりセコいです。保守系批判をするのが一番になっていて、女系が肯定されることは、ほとんど描かれていない。無理押しです。
Posted by 寺小路 at 2009年12月03日 23:29
 寺小路さん、小林よしのりは肝心なところを外します。彼は中川八洋氏のいう共産主義者に組する「有害な民族派」になりつつありますね。
Posted by 森羅万象の歴史家をめざす所長 at 2009年12月20日 20:52
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック

Trust Me ~私を信じて? NEVER TRUST THEM FOREVER! 
Excerpt: わしが愛国学園園長真・愛国無罪である。                /|:::::::::::::::::::::ヽ.:.:.:.:、:.:.:.:、:.:.:.、.:.、.:.:.:.:.:..
Weblog: 愛国学園 excite分校
Tracked: 2009-12-05 00:19
左翼歴史学者が顔面蒼白次項有幻の名著!戦争と共産主義-大東亜戦争とスターリンの謀略の目次韓流を楽しくする朝鮮民族を読み解く7つの鍵古代史学者は韓国人のなりすましか継体新王朝説を斬る「歪められた日本神話」とんびがタカを生むスーパー日本人を育てる適才教育・戦後民主主義の終着点は家族の解体と日本国の滅亡-なぜマルクスレーニン教は地獄の門を開くのかバカげた舛添要一の女性女系天皇容認論ナチスを愛した沢田研二の窮状・日本の国益を破壊する朝から晩まで反日新聞の錯覚商法天照大神は男系(父系)の女神小林よしのりの欺瞞皇室典範の改悪と日本版「文化大革命」を促す
本当は怖い日本国憲法の話次項有福島瑞穂の政治生命を奪う悪魔の憲法問答・日本国憲法の性格を映す災害基本法-菅直人が嘲笑される理由・韓国の邪悪な野望を打ち砕くアダム・スミスを超える日本の社会思想家・韓国人を震え上がらせるための日本憲法学の密教諸君が愛してくれた日本国憲法は施行前に死んだ!なぜだ!?逆賊の憲法改正案に御用心憲法の本質を示す憲法改正の手続き神州不滅思想が妨害する真正の法力(憲法の非常事態対処能力)再生方策・神か人か天皇とは何か・恐るべき小沢一郎の憲法論日本がアブナイ!日本国憲法の改正が日本国の自殺になる理由・日本国憲法の追認を戒める昭和天皇のおほみうた昭和天皇と憲法改正-エセ民族派が行っている最悪の天皇利用旧宮家の皇室復帰意義は30年前の予言書が指摘する日本の最悪危機の克服・小泉内閣の大罪女系天皇は憲法違反
教科書が教えられない日本の近現代史次項有韓国が日本の皇室を侮辱する歴史的理由・在日パチンコに魂を売った朝敵歴代天皇を論外の男系カルトに貶めたギャグ漫画家堀栄三元参謀の情報戦記が触れない大本営の奥の院の所在と正体・軍紀厳正を誇った日本軍の強姦、韓国軍のレイプ、支那軍の洗城・ああ惜しかったふらふら大日本帝国唯一の勝機・あなたの知らない石原莞爾の対アメリカ政戦略吉田茂が現役復帰させた史上最悪の反日的日本人日本共産党の反日史観によれば志位和夫の祖父は慰安婦強制連行の実行犯・パル判決が語る朝鮮人慰安婦強制連行説の虚構浄土真宗親鸞原理主義者が隠蔽する本当は恐ろしい国家神道の正体日本経済を破壊する辛坊治郎の狂態・人間の屑集団マスゴミが隠蔽する南京大虐殺が法的に成立しない理由捏造と自虐の昭和史を打ち破る日本人に知られては困る歴史
日本人が元気になります!知らないと損する情報次項有・あなたの新聞定期購読は国民生活と国家経済の自殺経済失政はなぜ繰り返すのかインテル長友佑都が実践日本人の潜在能力を引き出すトレーニング方法読み書き運動が苦手なのには理由があった学ぶことが大好きになるビジョントレーニング人生の無駄遣いテレビの視聴を止めて実践すれば病み疲れた体を癒す力を呼び覚ます驚愕の気功法