そして互いに異なる選挙方法や異なる運営原理をもって、この両院をして、立法機関としての共通の機能やともに社会に依存しているという性格の許す限り、できるだけ相互に関係ないようにしておく必要がある。それはなぜか?
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多人数からなる公選の第一院(下院)の欠陥を矯正する第二院(上院)は、まずそれ自体がこの欠陥を免れていないといけないからである。これは誰にでも理解できる至極簡明な憲法理論であろう。
「上院の必要性は、多人数からなる一院制の議会ではすべて、衝動的で過激な情念の刺激に屈しやすく、党派指導者により度をこした有害な決議に引き込まれやすい傾向があることからも、少なからず示されている。
この点に関する事例は、ほかの国々の歴史からだけではなく、邦連合の議事録からも数限りなく引用し得るであろう。しかし反駁されるべくもない見解は証明してみせなくてもよい。
記されるべきは、この欠陥を匡正する議院は、それ自体がこの欠陥を免れていなければならず、したがって余り数が多くてはならないということである。さらにいえば、この議院は強い安定性を持つべきであり、したがって相当に長い任期にわたって、その権能を保持するべきである」(ザ・フェデラリスト第62編)
しかるに我が国の場合、衆参両院とも公選議院であり、参議院は衆院と同じ公選議院の欠陥に覆われている。催眠商法を駆使する詐欺政党の議院進出、無知未熟な新人議員の当選、新人議員の大量当選による不安定な議会政治、党派指導者により度をこした有害な決議に引き込まれやすい傾向、選挙活動の煩雑、議席を死守するためには世論を操作するマスコミに迎合せざるを得ない議員の跋扈等々デモクラシーの弊害から参議院は免れることができない。
また衆院の多数を占める政党が衆参両院にまたがって存在し得る以上、選挙の結果次第では、一党が両院を制して立法権と内閣の行政権と最高裁判所長官の任命権を含む強大な権限を掌中に収めることができる。それが自由を欠く政党であった場合、たちまち一党独裁に近い「選挙による専制政治」が出現する。
国会の分割方法は冒頭の簡明な法理に反するから、「わが国のように、両院を直接選挙制にしつつ衆議院に優越性を与えている国家群は見当たらない。いかに異質の選挙制度を採用しているか理解できよう。異質が悪いというわけではないが、合理性に欠けるという点が問題」(日本国憲法を考える)になったのである。
占領憲法は国会の分割方法に失敗しており、西修教授が指摘するように、憲法第四章国会は欠陥品である。GHQによってマッカーサー憲法草案を強制された政府と帝国議会はこの欠陥を認識しており、草案を修正して各地の商工会議所などを選挙母体にして選ばれる職能代表議員をもって参議院を構成し、参議院に衆院と異なる性格を持たせようと試みたが、GHQの反対に遭い頓挫してしまった。
このことを憂慮した衆議院第十二回帝国憲法改正小委員会は1946年8月16日に次の付帯決議を行った。
「参議院は衆議院と均しく国民を代表する選挙せられたる議員を以て組織すとの原則はこれを認めるも、これがため衆議院と重複する如き機関となり終わることは、その存在意義を没却するものである。
政府は須らくこの点に留意し、参議院の構成については、努めて社会各部門職域の知識経験のある者がその議員となるに容易なるように考慮すべきである。」
これがGHQに対する衆議院帝国憲法改正小委員会の精一杯の抵抗であった。上の付帯決議は自由党の付帯決議案を基礎に各党作成の付帯決議案を調整して作ったものである(「日本国憲法」無効論)。政府も三大政党も含めて日本側が一致して参議院職能代表制案を望んでいたものの、この案がGHQによって潰されたことは今日の我々が絶対に忘れてはいけない事実である。
すなわち占領憲法の制定は日本側の自由意志を欠いており、明白にポツダム宣言違反であった。そして伊藤博文が起草した帝国憲法と、GHQに占領憲法を強制された占領軍下の日本政府と帝国議会の方がよほどアメリカ合衆国憲法のコメンタリー「ザ・フェデラリスト」に忠実であったのである。
読者の皆様には、所長が拙書【国民のための大東亜戦争正統抄史1928-56戦争の天才と謀略の天才の戦い95戦後民主主義の本質】に書き足した以下の文の意味が、御理解いただけたと思います。
「アメリカの占領軍が日本国を民主化したと信じ込まされてきた戦後生まれの日本人にとって皮肉な事に、人民の能力への不信感を率直に表明し、立法機関を厳重に制限し直接民主制を否定しなければならないことを力説するザ・フェデラリストの第四七篇「権力分立制の意味」、第四八篇「立法部による権力侵害の危険性」、第五一篇「抑制均衡の理論」、第六二篇「上院の構成」、第六三篇「上院の任期」、第七八篇「司法部の機能と判事の任期」が伊藤博文の憲法義解への理解と尊敬を深め、勅任の貴族院と皇室の自治を欠く日本国憲法の数々の欠陥を教えてくれるのである。」
もし「マッカーサーの占領軍が日本国に民主主義をもたらした」とか「軍国日本が民主化したのはアメリカのおかげです」とか言いふらす洗脳されたままの日本人と厚顔無恥なアメリカ人を見つけたら、上の事実を教えて懲らしめてやりましょう。
それにしても帝国憲法改正案委員小委員会速記録―第九十回帝国議会衆議院が2005年にようやく公刊とは…ひどい。
<関連ページ>
・数多くの問題を抱える日本国憲法を考える
・日本側にはどこにも自由がなかったことを指摘する「日本国憲法」無効論
・お昼まで熱あつ-ほとんどダンピング放出サムライの野戦用かっこいい弁当箱を装備せよ!剣闘士 グラディエータービギンズ「侍装備セット」
「現代日本人は新井白石のごとく気概をもって西洋人に説教せよ」
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ザ・フェデラリストはやはり買っておいて損はなかった。これこそ憲政の教科書にふさわしいものでしょう。民主党政権の誕生は戦後憲法によって起こるべくして起きたのであり、まさに戦後憲法の化身以外のなにものでもないのです。小沢チルドレンのほとんどが本来は議員になるべき人間ではないことからも明らかです。来年の参議院選挙は民主党の優勢だと思います。しばらくは残念ながら民主党が強いでしょう。ところで株価が随分下がってきていますね。せっかく大学院に受かったのにあまり明るい気持ちになれません。魔改造とRTSが唯一の慰めです。