2009年08月13日

大日本帝国憲法の制定を支えたアメリカ合州国建国の父たち 伊藤博文の座右の憲法学書はザ・フェデラリスト

 金子堅太郎、井上毅、伊東巳代治を指揮して帝国憲法を起草した伊藤博文の愛読書は、明治三年に政況および財政調査のためにアメリカを訪問した伊藤に、当時のアメリカ国務大臣フィッシュが贈与したアメリカ合州国憲法のコメンタリー(解釈書)ザ・フェデラリスト(一七八七年刊行)であった。

 伊藤博文は明治三年以来、このアメリカの古典的名著に依拠して憲法を研究し、彼ら四人が帝国憲法原案を起草していた時はもとより、明治二十一年から始まった枢密院帝国憲法制定会議の際にも、伊藤はフェデラリストを常に自分の座右に置いて何か問題が生じる度にこれを繰り返し読み、帝国憲法の制定に尽力したのであった(金子堅太郎著憲法制定と欧米人の評論

 帝国憲法の精緻な権力均衡分立主義と、デモクラシーの暴走と諸悪から国家を救済する帝国議会二院制は、アメリカの立憲議会制デモクラシーの起源であるフェデラリストの著者たち即ちアメリカ合衆国憲法の制定に尽力したアレクサンダー・ハミルントン、ジョン・ジェイ、ジェイムズ・マディソンの思想を受け継いだものであり、金子堅太郎から帝国憲法のコメンタリー憲法義解の英訳を贈られたマサチューセッツ州の大審院判事オリバー・ウェンデル・ホームズ(元ハーバード大学教授、金子堅太郎の師)は帝国憲法を次のように評したのである。

・読み終えたら、ぜひともブロガーに執筆意欲を与える1日1押人気ブログランキングをクリック願います。

 「憲法学の原理ほど各種の法律学中において不定にして且つ不強固なるものはあらざるなり。故に憲法学の地位を称して変遷の時代にありと言う。この見地より日本憲法を観察すれば日本の天皇および之を輔翼せし政治において一時急激に憲法政治の境域に狂奔せず、徐々にその基礎を固め漸次立憲の制度を施行するの目的を定められしは予のもっとも賞賛する所なり。

 また予が日本憲法を熟読するに当たり、天皇及び其の政府において保守主義を以てこの憲法を制定せられたる精神の全篇に充満するを祝賀するものなり。何となれば予は明治四年以来日本人と交わりを結び其の国の将来に向って大いに嘱望するが為に、時々その政治の変遷するを見ては常に日本政府及び其の人民の旧態を破壊し新制を創設するに急激なるを恐れ、其の前途を誤らざるかと憂慮せしが、今やこの憲法を見て明治四年以来の杞憂は全く消散すればなり。
 
 この憲法は予の観察する所によれば、古来専制の君主権を制限して人民に参政の権利を与えられるものなり。其の之を制限し其の之を付与するに付きこの憲法は明に君主権を制限する箇条を示し、また詳らかに人民に附与せし権限をも明文に記載せり。而して其の不文に属し明瞭に記載せざるものは往古の如く悉く天皇の旧来継承せらるる大権に属するものなりとの主義を採るて起草せられたるが如し。

 そもそも憲法政治とは一国の政治を処理する機関の配置及び権限を明確にし、之を主管又は執行する軌轍を明示し、その確定したるものは天皇といえども濫りに之を変更することを得ざるの政体を云う。而して其の機関の中において人民もまた政治上に参与するの権限を得たるの政体を云う。然れども其の参政の程度及び権限は広狭は各国古来の歴史習慣等によりて定まるべきものなり、故に甲国においては参政の程度広大にして乙国においては其の区域の狭小なるものあり。これ全く各国の習慣及び歴史より生ずるものなり。これ憲法に付いては一定の原理なき証拠なり。

 然れども其の参政の区域の広狭に拘らず憲法を以て帝王の専横を検束し、人民に参政の権利を与えたる政府なれば之を称して立憲政府と云わざるを得ず。日本憲法はこの理を看破せられたるものと予は断言せんと欲す。又日本憲法は天皇の大権のある部分を拘束して本年よりは日本人民に政治上の生命を与えられ、而してこの政治上の生命は古来いまだかつて存在せざるものなり。この政治上の生命あれば即ち其の政府を称して立憲政府と謂わざるを得ず。日本政府においてこの論理を採用せられたるは予がもっとも感服する所にして、賢明なる政治家の所為と言わざるを得ず。

 この憲法に付き予がもっとも喜ぶ所のものは、日本憲法の根本古来の歴史制度習慣に基づき、而して之を修飾するに欧米の憲法学の論理を適用せられたるにあり。欧米の憲法は欧米国に適するも日本国に適用せず、日本の憲法は日本の歴史制度の習慣より成立せざるを得ざるものなり。故に本年議会開設の後は日本の政治家たる人はこの憲法の精神に基づき、行政上においても古来の法律、習慣を研究し、国家の歴史慣例を標準として漸次欧米の立憲政治の論理を適用せられんことを望む


 ザ・フェデラリストに宿るアメリカ合州国建国の父たちの叡智がよく伊藤博文を指導し伊藤に助言を与え帝国憲法の起草を補佐し、後にアメリカ連邦最高裁判所判事を務めアメリカの良心となったオリバー・ウェンデル・ホームズが伊藤の憲法義解に満腔の共感を覚え、帝国憲法を絶賛したのである。それを議会二院制の意義すら知らなかった無知なGHQ民政局のニューディーラー(アメリカの容共主義者)が否定し、日本の民主化と称して帝国憲法秩序を破壊したのである。これは中国共産党が文化大革命と称して支那歴代王朝の文化遺産を破壊したことと同類の暴挙であった。

 アメリカの占領軍によって日本国は民主化されたと思い込んできた戦後生まれの我々日本人にとって皮肉な事に、人民の能力への不信感を露骨に表明し、立法機関を厳重に制限し直接民主制を否定しなければならないことを力説するザ・フェデラリストの第四七篇「権力分立制の意味」、第四八篇「立法部による権力侵害の危険性」、第五一篇「抑制均衡の理論」、第六二篇「上院の構成」、第六三篇「上院の任期」、第七八篇「司法部の機能と判事の任期」が伊藤博文の憲法義解への理解と尊敬を深め、民主党政権が通すであろう悪法から皇室と国民と国家を救えない、日本国憲法の数々の欠陥-勅任の貴族院と皇室の自治を欠いていること-を教えてくれることである。

 帝国憲法の復元に対してアメリカ人に文句を言わせないアメリカの古典名著がザ・フェデラリストです!

・読み終えたら、ぜひともブロガーに執筆意欲を与える1日1押人気ブログランキングをクリック願います。
↓↓↓


【関連する記事】
posted by 森羅万象の歴史家 at 22:09| Comment(3) | TrackBack(3) | 本当は怖い憲法のはなし | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
所長さん、お久しぶりです!
『ザ・フェデラリスト』ですか・・・大学時代に図書館でちょっとかじってみましたが、ハミルトンをはじめとする執筆者達の該博な知識と論理力に圧倒された覚えがあります。時間があればじっくり読んでみたいものですね~
ところで、所長さんは『アレグザンダー・ハミルトン伝(上・中・下)』(ロン・チャーナウ著)はお読みになりましたか?ハミルトン個人の伝記のみならず、米国独立~建国の過程が詳細に描写されていて、かなりオススメです!!

Posted by かりあげ渉太 at 2009年08月14日 11:00
本日15日、 靖国神社に行ってきました。
国家の為に亡くなった方々の慰霊の精神と、世界に冠たる全面戦争を行った兵士達への尊崇の念、そしてその命をかけた「靖国で会おう」の約束の場を維持継承することは、保守主義の立場からは重要なはずですが、自民党はほんとうにだらしない。

シナの精神侵略への最高の対抗の舞台として、なぜ英霊の場所を活かさないのか。活かしきって、初めて静かにお祈りのできる場所に到達できるはずなのに、なぜ戦わない?

フェデラリストの中核にいたハミルトンは優れた軍人でもありました。戦えない人間が、国政レベルの政治に携わってはいけないとしみじみ思います。
Posted by 寺小路 at 2009年08月15日 23:55
ザ・フェデラリストは人生において最も感動した本の一つです。民主主義の問題点を指摘し、どうすれば自由な社会を作ることができるのかということが論じられています。私は政治経済学科にいましたが、バークやハミルトンについて学ぶ機会がなく、なぜかルソーやマルクスについて長々と教えられました。バークが「ちょっこと」でルソーに3コマ「も」かけられていたんです!
Posted by 保守主義者 at 2009年08月28日 16:55
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック

甲斐中よ それで謝罪の つもりかい?  ~「固定資産税取り消し裁判」で朝鮮総連の敗訴確定
Excerpt: わしが愛国学園園長真・愛国無罪である。 いささか旧聞に属するが、8月12日、東京都が朝鮮総連の施設に課税したことを不服として朝鮮総連が都に取り消しを求めた訴訟の上告審で総連側の敗訴が確定したそう..
Weblog: 愛国学園 excite分校
Tracked: 2009-08-15 21:17

韓国の「対日補償要求」終了のお知らせ
Excerpt: わしが愛国学園園長真・愛国無罪である。 韓国政府が8月15日に「対日補償要求はできない」とする見解を発表した。 msn産経ニュース/対日補償要求は終了 韓国政府が公式見解 http://sank..
Weblog: 愛国学園 excite分校
Tracked: 2009-08-17 19:51

愛国説教部屋#9 ミンス・ザ・フラッグリッパー
Excerpt: わしが愛国学園園長真・愛国無罪である。 以前、 本校/放課後デムパ倶楽部#31 ”糞”の旗の下に集う者達 http://blog.livedoor.jp/school_for_patriot/a..
Weblog: 愛国学園 excite分校
Tracked: 2009-08-18 20:46
左翼歴史学者が顔面蒼白次項有幻の名著!戦争と共産主義-大東亜戦争とスターリンの謀略の目次韓流を楽しくする朝鮮民族を読み解く7つの鍵古代史学者は韓国人のなりすましか継体新王朝説を斬る「歪められた日本神話」とんびがタカを生むスーパー日本人を育てる適才教育・戦後民主主義の終着点は家族の解体と日本国の滅亡-なぜマルクスレーニン教は地獄の門を開くのかバカげた舛添要一の女性女系天皇容認論ナチスを愛した沢田研二の窮状・日本の国益を破壊する朝から晩まで反日新聞の錯覚商法天照大神は男系(父系)の女神小林よしのりの欺瞞皇室典範の改悪と日本版「文化大革命」を促す
本当は怖い日本国憲法の話次項有福島瑞穂の政治生命を奪う悪魔の憲法問答・日本国憲法の性格を映す災害基本法-菅直人が嘲笑される理由・韓国の邪悪な野望を打ち砕くアダム・スミスを超える日本の社会思想家・韓国人を震え上がらせるための日本憲法学の密教諸君が愛してくれた日本国憲法は施行前に死んだ!なぜだ!?逆賊の憲法改正案に御用心憲法の本質を示す憲法改正の手続き神州不滅思想が妨害する真正の法力(憲法の非常事態対処能力)再生方策・神か人か天皇とは何か・恐るべき小沢一郎の憲法論日本がアブナイ!日本国憲法の改正が日本国の自殺になる理由・日本国憲法の追認を戒める昭和天皇のおほみうた昭和天皇と憲法改正-エセ民族派が行っている最悪の天皇利用旧宮家の皇室復帰意義は30年前の予言書が指摘する日本の最悪危機の克服・小泉内閣の大罪女系天皇は憲法違反
教科書が教えられない日本の近現代史次項有韓国が日本の皇室を侮辱する歴史的理由・在日パチンコに魂を売った朝敵歴代天皇を論外の男系カルトに貶めたギャグ漫画家堀栄三元参謀の情報戦記が触れない大本営の奥の院の所在と正体・軍紀厳正を誇った日本軍の強姦、韓国軍のレイプ、支那軍の洗城・ああ惜しかったふらふら大日本帝国唯一の勝機・あなたの知らない石原莞爾の対アメリカ政戦略吉田茂が現役復帰させた史上最悪の反日的日本人日本共産党の反日史観によれば志位和夫の祖父は慰安婦強制連行の実行犯・パル判決が語る朝鮮人慰安婦強制連行説の虚構浄土真宗親鸞原理主義者が隠蔽する本当は恐ろしい国家神道の正体日本経済を破壊する辛坊治郎の狂態・人間の屑集団マスゴミが隠蔽する南京大虐殺が法的に成立しない理由捏造と自虐の昭和史を打ち破る日本人に知られては困る歴史
日本人が元気になります!知らないと損する情報次項有・あなたの新聞定期購読は国民生活と国家経済の自殺経済失政はなぜ繰り返すのかインテル長友佑都が実践日本人の潜在能力を引き出すトレーニング方法読み書き運動が苦手なのには理由があった学ぶことが大好きになるビジョントレーニング人生の無駄遣いテレビの視聴を止めて実践すれば病み疲れた体を癒す力を呼び覚ます驚愕の気功法