伊藤博文は明治三年以来、このアメリカの古典的名著に依拠して憲法を研究し、彼ら四人が帝国憲法原案を起草していた時はもとより、明治二十一年から始まった枢密院帝国憲法制定会議の際にも、伊藤はフェデラリストを常に自分の座右に置いて何か問題が生じる度にこれを繰り返し読み、帝国憲法の制定に尽力したのであった(金子堅太郎著憲法制定と欧米人の評論)
帝国憲法の精緻な権力均衡分立主義と、デモクラシーの暴走と諸悪から国家を救済する帝国議会二院制は、アメリカの立憲議会制デモクラシーの起源であるフェデラリストの著者たち即ちアメリカ合衆国憲法の制定に尽力したアレクサンダー・ハミルントン、ジョン・ジェイ、ジェイムズ・マディソンの思想を受け継いだものであり、金子堅太郎から帝国憲法のコメンタリー憲法義解の英訳を贈られたマサチューセッツ州の大審院判事オリバー・ウェンデル・ホームズ(元ハーバード大学教授、金子堅太郎の師)は帝国憲法を次のように評したのである。
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「憲法学の原理ほど各種の法律学中において不定にして且つ不強固なるものはあらざるなり。故に憲法学の地位を称して変遷の時代にありと言う。この見地より日本憲法を観察すれば日本の天皇および之を輔翼せし政治において一時急激に憲法政治の境域に狂奔せず、徐々にその基礎を固め漸次立憲の制度を施行するの目的を定められしは予のもっとも賞賛する所なり。
また予が日本憲法を熟読するに当たり、天皇及び其の政府において保守主義を以てこの憲法を制定せられたる精神の全篇に充満するを祝賀するものなり。何となれば予は明治四年以来日本人と交わりを結び其の国の将来に向って大いに嘱望するが為に、時々その政治の変遷するを見ては常に日本政府及び其の人民の旧態を破壊し新制を創設するに急激なるを恐れ、其の前途を誤らざるかと憂慮せしが、今やこの憲法を見て明治四年以来の杞憂は全く消散すればなり。
この憲法は予の観察する所によれば、古来専制の君主権を制限して人民に参政の権利を与えられるものなり。其の之を制限し其の之を付与するに付きこの憲法は明に君主権を制限する箇条を示し、また詳らかに人民に附与せし権限をも明文に記載せり。而して其の不文に属し明瞭に記載せざるものは往古の如く悉く天皇の旧来継承せらるる大権に属するものなりとの主義を採るて起草せられたるが如し。
そもそも憲法政治とは一国の政治を処理する機関の配置及び権限を明確にし、之を主管又は執行する軌轍を明示し、その確定したるものは天皇といえども濫りに之を変更することを得ざるの政体を云う。而して其の機関の中において人民もまた政治上に参与するの権限を得たるの政体を云う。然れども其の参政の程度及び権限は広狭は各国古来の歴史習慣等によりて定まるべきものなり、故に甲国においては参政の程度広大にして乙国においては其の区域の狭小なるものあり。これ全く各国の習慣及び歴史より生ずるものなり。これ憲法に付いては一定の原理なき証拠なり。
然れども其の参政の区域の広狭に拘らず憲法を以て帝王の専横を検束し、人民に参政の権利を与えたる政府なれば之を称して立憲政府と云わざるを得ず。日本憲法はこの理を看破せられたるものと予は断言せんと欲す。又日本憲法は天皇の大権のある部分を拘束して本年よりは日本人民に政治上の生命を与えられ、而してこの政治上の生命は古来いまだかつて存在せざるものなり。この政治上の生命あれば即ち其の政府を称して立憲政府と謂わざるを得ず。日本政府においてこの論理を採用せられたるは予がもっとも感服する所にして、賢明なる政治家の所為と言わざるを得ず。
この憲法に付き予がもっとも喜ぶ所のものは、日本憲法の根本古来の歴史制度習慣に基づき、而して之を修飾するに欧米の憲法学の論理を適用せられたるにあり。欧米の憲法は欧米国に適するも日本国に適用せず、日本の憲法は日本の歴史制度の習慣より成立せざるを得ざるものなり。故に本年議会開設の後は日本の政治家たる人はこの憲法の精神に基づき、行政上においても古来の法律、習慣を研究し、国家の歴史慣例を標準として漸次欧米の立憲政治の論理を適用せられんことを望む」
ザ・フェデラリストに宿るアメリカ合州国建国の父たちの叡智がよく伊藤博文を指導し伊藤に助言を与え帝国憲法の起草を補佐し、後にアメリカ連邦最高裁判所判事を務めアメリカの良心となったオリバー・ウェンデル・ホームズが伊藤の憲法義解に満腔の共感を覚え、帝国憲法を絶賛したのである。それを議会二院制の意義すら知らなかった無知なGHQ民政局のニューディーラー(アメリカの容共主義者)が否定し、日本の民主化と称して帝国憲法秩序を破壊したのである。これは中国共産党が文化大革命と称して支那歴代王朝の文化遺産を破壊したことと同類の暴挙であった。
アメリカの占領軍によって日本国は民主化されたと思い込んできた戦後生まれの我々日本人にとって皮肉な事に、人民の能力への不信感を露骨に表明し、立法機関を厳重に制限し直接民主制を否定しなければならないことを力説するザ・フェデラリストの第四七篇「権力分立制の意味」、第四八篇「立法部による権力侵害の危険性」、第五一篇「抑制均衡の理論」、第六二篇「上院の構成」、第六三篇「上院の任期」、第七八篇「司法部の機能と判事の任期」が伊藤博文の憲法義解への理解と尊敬を深め、民主党政権が通すであろう悪法から皇室と国民と国家を救えない、日本国憲法の数々の欠陥-勅任の貴族院と皇室の自治を欠いていること-を教えてくれることである。
帝国憲法の復元に対してアメリカ人に文句を言わせないアメリカの古典名著がザ・フェデラリストです!
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『ザ・フェデラリスト』ですか・・・大学時代に図書館でちょっとかじってみましたが、ハミルトンをはじめとする執筆者達の該博な知識と論理力に圧倒された覚えがあります。時間があればじっくり読んでみたいものですね~
ところで、所長さんは『アレグザンダー・ハミルトン伝(上・中・下)』(ロン・チャーナウ著)はお読みになりましたか?ハミルトン個人の伝記のみならず、米国独立~建国の過程が詳細に描写されていて、かなりオススメです!!
国家の為に亡くなった方々の慰霊の精神と、世界に冠たる全面戦争を行った兵士達への尊崇の念、そしてその命をかけた「靖国で会おう」の約束の場を維持継承することは、保守主義の立場からは重要なはずですが、自民党はほんとうにだらしない。
シナの精神侵略への最高の対抗の舞台として、なぜ英霊の場所を活かさないのか。活かしきって、初めて静かにお祈りのできる場所に到達できるはずなのに、なぜ戦わない?
フェデラリストの中核にいたハミルトンは優れた軍人でもありました。戦えない人間が、国政レベルの政治に携わってはいけないとしみじみ思います。