2008年11月05日

憤るロシアの研究者と騙す日本の歴史学者 プリンス近衛殺人事件とハルノートを書いた男

 プリンス近衛殺人事件(滝澤一郎訳/新潮社2000年)の著者V.A.アルハンゲリスキーは、1928年生まれの作家でジャーナリスト。ロシア国会専門員で、イズベスチア紙別冊週間ニェジェリーニャ誌編集長、イズベスチヤ紙副編集長、ウズベキスタン国会議員、タシケント市長などを歴任した人である。

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 アルハンゲリスキーは10年をかけて数万点に及ぶクレムリンの機密文書を調査し、ソ連よってシベリアに連行され抑留された日本人の実数が日本の定説よりはるかに上回ることを実証したが、彼はプリンス近衛殺人事件の中で、歴史の真実の探求を妨害する風潮に対して、次のように憤っている。

 だが、今のところ確認されたのは百万なのだ。虚偽と捏造の巨峰はこれで崩れ落ちたのだろうか?とんでもない。ほんのちょいと揺らいだくらだ。真実の発掘に十年の人生をささげたが、シベリア抑留の核心解明のほんのとば口にたどり着いたというのが正直な感想だ。筆者と意見をおなじくしようと反対の意見の持ち主であろうとかまわない、誰か一緒に調査してくれる人がいたらどんなに気が楽であったことか!でも誰もいなかった。討論し、論争し、証明し、説得する相手はいなかった。日本と違い、ロシアにはこの五十年間にシベリア抑留についての学問的な労作といえるようなものは何もなかった。ちゃんとした本もなかった。国禁のテーマだった。臭いものには蓋をしろということだった。

 今でも事情は大して変わっていない。しかも今のロシアは貧しくてしかも鈍している。ロシアの日本研究もそうだ。シベリア抑留という未開の処女地をこすっ辛く儲け口にした方がいいじゃないかというような者たちもいる。文書保管所の職員に日本人抑留者の個人調査票(五十数万!通が保存されている)をコピーさせ、日本に売りつければいいじゃないか。儲かるし、実入りもいい、それに楽な仕事だ、と言う。
 残念ながら、ときおり金を持った日本人がやってきて、こういう手合いに引っかかっている様子なのだ(163ページ)。

 かつて、ルビャンカカーゲーペー本部は日米の激突を画策し、知る人ぞ知る「雪」(スニェク)工作を立案した。これはソビエト情報部のつくった数々の諜報工作の中でも傑作とされ、日本軍の真珠湾攻撃はルビャンカで計画されたといえるものなのだ。

 最近、この工作の意義を矮小化しようとする歴史家やジャーナリストがいるが、これらはいずれもソ連の卑劣な陰謀工作を隠蔽・正当化しようとするカーゲーペー系の人たちである。「雪」工作やその他のいくつかの極秘工作はやがてソ連の原爆実験に結実するが、その功をもって工作責任者であるあのロシア人なら忘れようにも忘れられない怪人物、ラヴレンチィ・パブロヴィチ・ベリヤは、スターリンの最高機密命令でソビエト名誉市民に推挙された。この事実は今でも知る者は少ない(132ページ)。

 当時ゾルゲの名はソビエト情報部にとっても少なからぬ意味があった。近衛文隆はこの工作員を知っていただろうか?むろん知っていた。しかも、よい友達だった。父近衛首相の秘書官であった牛場友彦、岸道三や尾崎秀実らと同じように友人であった。共産主義者である尾崎はゾルゲスパイ団の中心的な人物であり、中国問題専門家として、朝日新聞紙上で中国侵攻を煽り、近衛首相の側近の一人(内閣嘱託)になっていた。首相は尾崎に全幅の信頼を置いていた。

 「憂鬱なる貴公子」と呼ばれた近衛文麿公は東南アジアの地図を塗り替え、日本を頂点に諸民族・諸国家の合同をつくるという構想をあたためていた。

 日本を中国大陸の泥沼にはまりこませ、弱体化させ、さらにアメリカと戦わせてふらふらになったところをちょっと一突きしてとどめを刺すというのがスターリンの深謀遠慮だった。ゾルゲの直接の指示を受けながら尾崎はこのスターリン戦略に沿って首相官邸内外で暗躍した。尾崎は『朝日新聞』紙上で中国侵攻を煽りつつ、ソ連を攻めることの危険をことあるごとに近衛首相に吹き込んだ(133ページ)。

 第一次近衛内閣(一九三七年六月発足)で書記官長(今の官房長官に当たる)、第二次近衛内閣(一九四〇年七月発足)では司法大臣になる風見章も昭和研究会の一員であり、ゾルゲの知人だった。昭和研究会にはいくつかの専門分科会があり、風見はそのひとつである支那問題研究会に入った。風見が委員会メンバーとしてまっ先に推薦したのがゾルゲの分身たる尾崎秀実であった。

 風見もマルクス主義者であり、戦後は左派社会党の国会議員だった。日ソ協会の副会長としてソ連当局と太いパイプをもった風見章は友好ルートを通じて夫の遺骨の里帰りを請願する近衛文隆未亡人の書簡をソ連閣僚会議に届けた(135ページ)。

 密告者だの偽装工作員だのは筆者にとっては珍しくも何ともない。ましてバーヴェル・スダプラートフの回想記などを読んでいると、ふっと周囲を見回している自分に気づく。おでこにカーゲーペーのロゴを貼り付けているやつがいないかと探しているのだ。

 スダプラートフによると、世界中どこでもソ連のスパイだらけだ。ヒトラーの親友も、フランコ総統の先生も、文豪チェーホフの甥の妻で女優であったオリガ・チェーホフも、その兄のクニッパーもみなソビエト・スパイだった。

 ドイツ軍がモスクワを占領した場合、モスクワに来るヒトラーの暗殺が区ニッパーの任務だった。アメリカ原爆開発プロジェクト、マンハッタン計画の責任者であったオッペンハイマー博士は、共産主義者といわれたが、婦人は工作員だった。本人も、最近明らかになったところによると、よくモスクワに来ては、ベリヤの家に泊まっていたという。

 このほかにも、ナチスドイツの外相リッペントロップの補佐官の妻、駐ソ・ユーゴ大使ガブリロヴィチ、ルーズベルト大統領時代の米財務次官補H・D・ホワイト、ルーズベルト大統領情報問題補佐官エフロン、ソ連共産党中央委副部長・ソ連国家テレビ・ラジオ委員会議長・駐オーストラリア大使を歴任したミェシャッツェフ、タトミロフ主教、セルギィ大主教、ソ連スパイは数限りなくいる(147ページ)。


 アルハンゲリスキーが憤る「雪工作の意義を矮小化しようとする歴史家やジャーナリスト」に相当する日本人は、「ハル・ノートを書いた男―日米開戦外交と「雪」作戦 (文春新書1999)」の著者の須藤眞志と、NHKであろう。

 「ハルノートを書いた男」124~165ページには、1997年9月、NHK取材班が行ったビタリー・グリゴリエッチ・パブロフ(元NKVD内務人民委員部対米諜報部副部長)に対する質疑応答の模様が記述されている。  

 パブロフは、1941年5月にハリーデクスターホワイトに接触、「日本のソ連侵攻を困難にすること」を依頼したこと(ソ連側コードネーム雪作戦)を認めながら、ホワイトはスパイではないといい、さらにソ連の謀略活動について次にように証言している。

長井(ディレクター)「おききしたいのは、つまり、あなたの計画の中には、アメリカと日本を対決させるというような考えは全くなかったのですか。

パブロフ「まったくそんな考えはありません。でもいずれにせよ、アメリカと日本は、その極めて重要かつ死活的な利害から衝突するだろうとは確信していました。日本がもしその方向で何らかの行動を計画しているのなら、ことさら自分の状態を複雑にする必要はないと、そのことを警告するのがわれわれにとって重要だったわけです。それがすべてです。この件でわれわれが、日米戦争に関心を抱いていたと考えるのは間違っています。日米戦争はその他の歴史的な全く違った要因で起きたのです。

 
 所長は、このパブロフ証言は偽証である、と即断した。なぜならパブロフ証言は、尾崎秀実らゾルゲ機関の作為戦争謀略活動とそれを示す文書、すなわち我が国を対米英戦から敗戦革命へ誘導する尾崎の戦時論文「大戦を最後まで戦うために」(改造昭和16年11月号)が示すソ連の世界戦略と、全く矛盾するからである。果たしてパブロフ証言は虚偽であり、ホワイトはスパイであった。

 須藤眞志は、「近衛のブレーン集団として作られた昭和研究会も日本の国家的膨張を理論づけようとしていた」(198ページ)と述べながら、昭和研究会の中核が尾崎秀実ら日本のコミンテルン(ソ連共産党国際部)系統の共産主義者であったことには触れず、パブロフの見え透いた虚偽証言を疑わず、「結論的に言えば、ソ連の工作によって日米戦争が起こされたとするソ連陰謀説は、パブロフの証言を見るかぎり、まったく当たっていない」(165ページ)と断定し、「日米開戦の真因は日米間のパーセプションギャップ(認識の差違)」(194~213ページ)という陳腐な史観を開陳している。

 また須藤眞志は、「日清、日露戦争及び満洲事変、日華事変と続く大陸での紛争は、すべて陸軍のなかに強固に根付いていた北進論の結果であった」という的外れな史観を述べている。
 多田駿、石原莞爾、小畑敏四郎、真崎甚三郎を始め陸軍の北進(対ソ戦)論者は支那事変に猛反対し、尾崎秀実や佐藤賢了を始めとする南進論者が支那事変を拡大長期化させたというのに…。

 須藤眞志は、もしかするとNHKと共に、ソ連を擁護する為にわざとパブロフの虚偽証言を紹介し、ソ連陰謀史観を打ち消そうとしたのかもしれない。
 NHKは、ゾルゲを「反戦平和主義者」と礼賛する番組を平然と報道し、視聴者の大ひんしゅくを買った、日本反日左翼協会だから。

 航空幕僚長の田母神俊雄空将は、近衛内閣の方針に猛反対した陸軍参謀次長の多田駿中将を髣髴とさせる武人である。

 デモクラシーと同じくシビリアンコントロールは頻繁に間違いだらけの政策を生む厄介で危険な代物である。だから自衛隊の幕僚幹部は、多田駿を立憲君主制議会制デモクラシー国の軍人の鑑として、政治家と積極的に議論し、政治家の立案する国防政策の間違いを糾し、時と場合によっては職を賭して総理大臣と防衛大臣に諫言する気概と勇気を持たなければならない。

 そうでないと、シビリアンコントロールは、狂人の刃物になってしまう。

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「自治労、日教組、部落解放同盟に支持母体とする極左民主党の人民戦線ならぬ地球市民内閣が誕生して、国家主権の委譲と縮小を図るために人権擁護法案と在日外国人地方参政権付与法案を成立させようとする場合、自衛隊と一般国人はスペイン現代史の迷路を読み、覚悟を決めなければならない!!」


【所長の書評】

 以下の本は、テーマが狭いが数多くのクレムリンの機密文書を掲載している。
 だからプリンス近衛殺人事件ひらめきひらめきひらめき決定

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