平間教授は自分自身の経験に基づいてコミンテルン史観を抜きに日本の近代史を論ずべきではないとの史観-歴史の観方(みかた)を生んだのである。
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第二次世界大戦と日独伊三国同盟-海軍とコミンテルンの視点から(平間洋一著/錦正社2007)
目次
序論
第一章三国同盟の締結と日本海軍
一、日本の近代化とドイツ
二、第二次世界大戦前の日独関係
三、日独防共協定と陸海軍情報協定の締結
四、ジョージ六世戴冠式と日英独関係
五、訪独親善使節団の訪問中止
六、日独伊三国同盟の締結
七、開戦前のドイツ海軍の協力要請
八、「南へ進め」ドイツのシンガポール攻撃要請とオトメドン事件
九、松岡外相の訪独とシンガポール攻略問題
第二章独ソ開戦と日独ソ関係
一、日ソ中立条約の締結と松岡外相
二、独ソ開戦と松岡外相
三、南進決定とコミンテルンの影
四、シンガポール攻略と日本の勝機
五、ドイツの要請「北へ進め」と関東軍特種演習
六、ドイツの要請「北へ進め」と海軍の対応
七、独ソ開戦と日本の対ソ姿勢
第三章独ソ開戦と日米関係
一、野村大使の派米と松岡外相
二、「日米諒解案」の謎
三、「日米諒解案」と松岡外相
四、日米交渉と独ソ戦の勃発
五、「仕掛けられた戦争」に自爆した日本
六、開戦外交-「身元不明者グループ」の外交再考
第四章日本海軍のインド洋作戦
一、日独海軍の共同作戦機構の構築
(1)単独不講和協定の締結
(2) 軍事専門委員会の設置
(3)日独軍事協定の締結
二、日本海軍のインド洋作戦
(1) 独連合作戦の協議と初期作戦
(2)ドイツ海軍からのインド洋派遣要請
三、日独の戦争指導の不一致
(1)「北へ進め」のドイツ陸軍と日本の対応
(2)イタリア機の飛来と空路連絡便設定問題
(3)戦争指導の混迷と連絡使節の派遣
(4)チャンドラ・ボースの来日
(5)日独戦争指導の亀裂
(6)海軍の汚点、潜水艦の戦争法規違反事件
第五章ドイツ海軍のインド洋作戦
一、水上艦艇による海上交通破壊戦
(1)戦闘艦艇による海上交通破壊戦
(2)仮想巡洋艦による海上交通破壊戦
二、極東における独伊海軍の潜水艦戦
(1)ドイツ潜水艦の極東への展開
(2)独伊潜水艦のインド洋作戦
三、インド洋潜水艦戦の衰退と終焉
四、日独インド洋作戦の評価
第六章日独海軍の海上連絡便
一、封鎖突破船に物資の輸送
二、封鎖突破船による人員の輸送
三、日本海軍の潜水艦による連絡
四、ドイツの潜水艦による連絡
(1)物資の輸送
(2)人員の輸送
五、イタリア海軍の輸送潜水艦
第七章日独連合作戦の問題点
一、日独連合作戦の政戦両略上の問題点
(1)日独政戦両略の分裂
(2)陸海軍戦争指導の分裂
(3)相互過信のミラーエフェクト
(4)相互過信のミラーエフェクト
(5)日独両国内の獅子身中の虫
二、日独インド洋共同作戦上の問題点
(1)潜水艦用法の蹉跌
(2)日独連合作戦上の問題点
(3) 方支援上の問題点
第八章ドイツの敗戦と日本海軍
一、ドイツの降伏と極東のドイツ海軍
二、駐独海軍武官のスウェーデンにおける和平工作
三、駐独海軍武官のスイスにおける和平工作
四、ドイツ潜水艦の極東回航要請
五、ドイツの降伏と日本の対応
第九章日独技術・経済関係
一、野村視察団による技術導入
二、大戦中の日独技術交流
(1)潜水建造技術
(2)航空関係の技術
(3)その他の技術
(4)日本から供与された技術と武器
三、日独経済・技術協定の締結
四、技術から見た日独関係
(1)ドイツの技術と日本海軍
(2)親独・親日家の活動
(3)日独の国家エゴと大目標の欠如
第十章日本海軍と日独ソ関係
一、日本の開戦と日ソ関係
二、大戦中に日ソ間に生じた問題
(1)通峡制限
(2)船舶の被害をめぐる問題
(3)米国への基地提供問題
(4)米国からの移籍船舶問題
三、ソ連の対日参戦と米国の対ソ援助
四、日本の対ソ終戦交渉
五、陸海軍の終戦工作と戦後構想
六、ソ連侵攻と日本海軍
(1)日本海軍の対ソ作戦計画
(2)ソ連軍の千島・樺太占領作戦と日本海軍
七、ソ連の千島占領と米ソ関係
第十一章コミンテルンから見た第二次世界大戦
一、近衛文麿と革新官僚と陸軍統制派
二、反コミンテルンがもたらした日独接近
三、コミンテルンと日中一五年戦争
四、コミンテルンから見た米国
五、コミンテルンに二度敗北した日本
六、太平洋戦争の人種的視点-日独比較
第十二章 海軍・外務省の戦争責任と東京裁判史観
一、日独伊三国同盟の評価
二、海軍の戦争責任と高木惣吉少将の弁明
三、海軍と外務省の「イカ墨」論争
四、外務省の戦争責任と東京裁判史観
おわりに
一、人は変わる思想も変わる
二、本書執筆の動機
第二次世界大戦と日独伊三国同盟―海軍とコミンテルンの視点からは、平間洋一教授がプロの戦史家として、所長の戦史(2003年全面公開)を下敷きの一にして、これに戦術、戦略、兵器、技術などの詳細な軍事的分析を加えたものである。だから所長のような戦史オタが「さすがプロ」と喜びながら読める詳細な研究書になっているが、そのぶん第二次世界大戦の全体像の描写は薄れ、余り興味のない人には若干読み難いものになっている。
所長がこの本を読んで気に掛かったことは、平間洋一教授が所長と同じく「大東亜戦争とスターリンの謀略―戦争と共産主義」(三田村武夫著/自由社)を重視し、尾崎秀実の南進工作には触れながら、尾崎の支那事変長期化工作には触れず、また支那事変を拡大させ我が国を対米英戦へ誘導しようとする尾崎の戦時論文を満載した尾崎秀実著作集を使わずに、尾崎ら昭和研究会の共産主義者によって推し進められた近衛新体制運動を反共運動と述べていることである。
所長にとって、この本は、隔靴掻痒の感を否めないというか、画竜点睛を欠くというか、何となく物足りないのである。平間洋一教授は次のように述べている。
このように日本は尾崎の描いたコミンテルンの戦略に乗せられ、アジア解放を夢見て大東亜戦争にのめり込み昭和の悲劇を招いたのである(第二次世界大戦と日独伊三国同盟-海軍とコミンテルンの視点から289ページ)。
ヒトラーは共産主義に対抗するため国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)を、近衛は大政翼賛会を結成するなど、日独両国は異なる社会主義を掲げて共産主義という敵と戦ったが、日本では尾崎秀実などの共産主義者たちが近衛首相や革新軍人を操って「南進・対米開戦」へ仕向けた。
一方、米国では「ピンコ」と呼ばれる共産主義者あるいはシンパがマルクス主義を支持し、容共的なローズベルト政権に潜り込み、新中国的で海軍主義者のローズベルト大統領や対日強硬論者のスチムソン陸軍長官などを操り、日米開戦への陰謀を推進した。
このように日米は「資本主義国同士を戦わせて共倒れにさせ、最後に覇権を握る」とのコミンテルンの陰謀に踊らされて戦ってしまったのではなかったか(第二次世界大戦と日独伊三国同盟-海軍とコミンテルンの視点から299ページ)。
軍事史学会理事、太平洋学会理事、戦略研究学会理事、岡崎研究所理事、横須賀市史(軍事編)編集委員長、呉海事歴史科学館資料収集委員・諮問委員、国際政治学会会員という数多くの肩書きを持つ平間洋一ほどのプロが、夥しい数の資料文献を使用しながら、なぜ百尺竿頭一歩を進めようとしないのか、と思いながら所長が読み進めていくと、平間教授は所長の疑問に答え正直に告白してくれた。
本書を書き終えて強く感じたことは、日本では未だにコミンテルンやマルクス主義者に関する歴史を書けないということである。
それはコミンテルン関係の資料が少ないだけでなく、コミンテルンの陰謀に荷担した、あるいは操られていた著名な学者や大新聞などが未だマルクスの主張した社会主義(共産主義)に共鳴したり、都合の悪い部分を隠蔽しすり替えているからである。
さらに、ゾルゲ事件でスパイとして摘発された尾崎秀実を平和主義者、あるいは反権力運動の英雄とすりかえ、さらにこれらの著名な学者や新聞が日本では進歩的な自由主義者として大きな影響力を持っており、筆者を含めた研究者が学会や言論界から排除されることを懼れ、自らを江藤淳が指摘する『閉ざされた言語空間』に閉じ込めているからである。
しかし、コミンテルンの日本の近現代史に及ぼした影響を解明しない限り、真の昭和史は永遠に完成しないのではないだろうか(第二次世界大戦と日独伊三国同盟-海軍とコミンテルンの視点から331ページ)。
ああ、やはり、そういうことだったのか。空幕長の田母神俊雄氏がソ連およびコミンテルンの謀略活動に言及する戦史論文を公表して、朝日新聞社、NHK、TBSなどのマスコミや左翼勢力の袋叩きに遭った。これは残念ながら平間洋一教授の懼れが、杞憂ではなく日本国の現実であることを証明してしまった。
所長の手元に、ピースフィーラー支那事変和平工作の群像(戸部良一著/論創社1991年)がある。膨大な資料を基に執筆された、ストーリー性ゼロ、時代全体像の描写ゼロ、所長ですら途中で何度も投げ捨てたくなったほど読み難いこの研究書は、異様の一言に尽きる。
著者の戸部氏は、「ピースフィーラー」の中で戦争と共産主義(三田村武夫著)を使い昭和13年の萱野長知工作を分析しながら、汪兆銘政権樹立工作の謀略的意義や尾崎秀実ら共産主義者が支那事変の拡大長期化を正当化するために盛んに宣伝していた東亜新秩序の具体的構想である東亜協同体論に全く触れていない。
そればかりか本文の中では尾崎秀実の「お」の字も出ず、さらに巻末の参考文献一覧表では、みすず書房現代史資料ゾルゲ事件1~4(4巻は1971年刊の現代史資料24番)のうち第2巻「尾崎秀実訊問調書」のみが欠落しているのである(ピースフィーラー398~399ページ)。
戸部氏は現代史資料ゾルゲ事件のうち第2巻のみを使用しなかったのか、それとも使用したものの参考文献一覧表には敢えて第2巻を挙げなかったのか、所長には知る由もないが、いずれにしても尾崎秀実を徹底的に忌避する戸部氏のピースフィーラーからは、平間教授のいう懼れ-自己保身を感じずにはいられない。そして現役の日本近現代史専攻学者の懼れは、殆ど恐怖に近いのであろう。
自治労、日教組、部落解放同盟に支持(指示)される極左民主党の鳩山由紀夫が「早くトカゲのしっぽを切った方がいいと思っているならとんでもない間違いだ。参院で深く掘り下げて、二度とこのような発言をする人が政府の中にいなくなるよう戦っていく」などという暴言を吐いて戦後日本の「閉ざされた言語空間」をさらに圧縮し、表現の自由と学問の自由を押し潰そうとするのも、当然のことか。
それにしても日本の政治家の素質は急速劣化している。まるで大気圏に突入して燃え尽きる隕石か機動戦士ガンダムのMS-06ザクⅡのようだ。
かつて鳩山一郎は日記(昭和十五年十一月一日)に、
「近衛時代に於ける政府の施設凡てコミンテルンのテーゼに基く。寔に怖るべし。一身を犠牲にして御奉公すべき時期の近づくを痛感す」
と書き、「大政翼賛会に対して批評を加えてならない、批評を加えれば厳罰に附する」と云うようなことを言って、政治家および一般国民の口を封じようとした大政翼賛会および近衛内閣を糾弾したのに、一郎の孫である鳩山由紀夫は、コミンテルンの謀略活動に言及した空幕長および麻生内閣を糾弾し、左翼勢力の手先になって政府関係者の口を封じようとするとは…所長は呆れ果てて絶望の溜息をつくのみである。
結局のところ、歴史学専攻ではない学者とプロ作家と所長のようなアマチュア歴史好きが、歴史学者以上に第一次資料集を読み漁り、歴史の真実を一般人に発信して、政治家、歴史学者、マスコミを「王様は裸」状態にする以外に、赤い毒ガスが充満した戦後日本の『閉ざされた言語空間』から日本国民を救出する術はないのだろう。それは百年河清を待つに等しいことであるが。
【所長の書評】
夥しい数の脚注と参考文献を載せており、読者の知識を広げてくれる親切な研究書が第二次世界大戦と日独伊三国同盟―海軍とコミンテルンの視点から―評価は5点中4点!
<関連記事>
・大東亜戦争とスターリンの謀略-戦争と共産主義の目次
・尾崎秀実の論文一覧
・日本の閉ざされた言語空間をさらに狭めようとする間抜けな学者-防大校長の五百旗頭真の本性
・戦後における大本営発表-真実を雄弁に語る虚偽
・ソ連の作為戦争謀略活動に果敢にメスを入れる山本五十六の大罪―連合艦隊司令長官 亡国の帝国海軍と太平洋戦争の真像
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村山談話を踏襲し、更には言論弾圧を行う卑怯な麻生は恥を知れ!
昨今、現在体制の「ニッポン」は自分の国に感じられなくなっています。これは「日本」じゃない。
しかし、ここ以外「にっぽん」は存在しない。悩ましい。日の本という歴史的一体性を取り戻す、内乱でも起こすよりほかないような気がしてしまう今日この頃です。
あれは、日本の教育をさらに破壊する左翼型革命推進に繋がるでしょう。直接的にはこれが非常に痛い感じがしております。
しかし田母神論文の間違いを具体的に指摘する人が見えないのは、面白いですね。
田母神俊雄空幕長は、まさに「日の本という歴史的一体性を取り戻すために」たった一人で政府に反乱を起こしたということでしょう。
民主党はギロチンブーメランの名手だから、田母神氏の国会参考人招致は実に面白い事態を引き起こすかもしれませんよ。
極東国際軍事裁判酒田臨時法廷で、連合国検察官を翻弄圧倒した石原莞爾みたいにね。