2010年04月05日

歴史書の合成の誤謬-宇垣一成・孔祥煕工作を省いた中村粲

 通史を執筆する者は史実の取捨選択を迫られる。そして選択がバランスを失うと時代を構成する各事件の解説が精密であっても、時代の全体像は歪み、通史書は読者を真実とは懸け離れた結論へ導く虚偽宣伝書に堕ちてしまう。軍事バランスの崩壊は一触即発の危機を生み(現代大戦略)、経済だけでなく歴史書においても合成の誤謬が起きるのである。

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 中村粲の大東亜戦争への道第16章対支和平への努力第二節汪精衛―悲劇の愛国者はバランスを欠いた記述の典型例である。これは冒頭の「日支和平派の接触」(464~465ページ)から虚報の詐術(故意に重要な史実を省き読者の思考を操作する遣り方、いわゆるマスゴミが愛用するスルーの詐術)を駆使している。

日支和平派の接触 

 第一次近衛声明が出た後、水面下では日支双方の和平派の接触が精力的に進められることになつた。七月(昭和十三年)には高宗武(前出)が来日し、影佐禎昭・陸軍省軍務課長ら軍の指導部と会い、「国民政府を対手とせず」の近衛声明発出にはそれだけの理由もあり、すぐには撤回できないので、過渡期の策として中国の元老である汪精衛を相手に和平工作を進め、それが軌道に乗ったところで、汪の推薦で正式の交渉相手を蒋介石に切り換へてはどうか、との提案を日本側から受けたのであつた。

 帰国した高は同志の梅思平(中央宣伝部香港特派員)との協議の上、和平試案を作成して日本側に内話うると共に、汪兆銘(号は精衛)の決起を求めた。汪も、国民政府内の対日和平派が漸次弾圧を加へられつつある状況に鑑み、自づから決意する所あり、高・梅両名を改めて中国側代表に指名して対日折衝を命じたのであつた。斯くして汪出馬への気運は、相当早い時期から日支双方の和平派の間で動き出したと云へるのである。

「東亜新秩序」-第二次近衛声明 

 昭和十三年秋、日支問題は重大な岐路を迎えてゐた。南支では広東が陥落し(十月二十一日)、中支では武漢三鎮が陥落(同二十六日)したものの、支那事変解決の目途は立たず、我軍の兵站線は徒らに延びるばかりであつた。しかもこの年七・八月にはソ満国境でソ連軍が我軍を挑発した張鼓峰事件(後述)が発生するなど、支那事変の急速解決がいよいよ切実な国家的要請となってきた。「東亜新秩序」を謳つた第二次近衛声明が出されたのは、このやうな状況下の十一月三日であつた(後略)。


 1938年7~8月にソ満国境で張鼓峰事件が発生し、支那事変の急速解決が切実な国家的要請となっていたのは事実である。だからこそ我が国は宇垣一成・孔祥煕工作の交渉中に中華民国側が提示してきた対日和平条件を受諾して日中全面和平を成し遂げるべきであった。

 そして中国共産党の殲滅は蒋介石に委ね、我が国は戦力および国力のすべてを対ソ戦備の拡充に回し、好機に乗じて北進、沿海州を満州国に、北樺太を我が国に奪還して北辺の守りを固めるべきであった。所長が思うに、これこそ真正の防共政策であり反共戦争であった。

「戦争の天才」と「謀略の天才」の戦い 国民のための大東亜戦争正統抄史1928-56【日支全面和平を打ち砕いた者
 
 中村総領事は、六月二十三日から七月十九日まで六回に亘って喬輔三と会談し、喬から国民政府が希望する対日和平条件として、漢口陥落前に和平合意を実現し休戦協定を成立させること、蒋下野は困難なので代わりに孔祥煕が全責任を負って辞職することの他、

1、反日行為の停止。
2、日満華条約締結による満洲国の間接承認(ただし満洲国は自発的に「満洲自由国」となることが望ましい)。
3、内蒙古自治の容認。
4、華北の特殊地域化は困難(中国全体での平等互恵の経済開発は認める)。
5、非武装地帯の問題は日本の具体的要求をまって解決する(非武装地帯には日本側も駐兵しないことを希望する)。
6、共産党との関係清算(防共協定加入あるいは特別協定締結は未定)。
7、賠償支払の能力なし。

など七項目を伝えられていた 。


 中華民国国民政府が希望した以上の対日和平条件が我々に教えてくれる重要な事実は、満州国は必ずしも日中和平の障害ではなく、また第一次近衛声明は我が国の致命傷とはなっておらず、蒋介石は第二次国共合作の破棄と日中の提携を模索しており、1938年7~8月に日中全面和平の実現可能性はあったということである。

 宇垣一成・孔祥煕工作は戦史学徒の間では有名なもので、たとえば所長の手元にある良心的な大東亜戦争の通史書の一つ重臣たちの昭和史 下巻(勝田龍夫著/文春文庫、1984年初版発行)にも出ている。

 孔院長が提示してきた和平条件には、満州国は日満中三国条約締結により間接的に承認する、内蒙の自治を容認する、共産党との関係は清算する、また非武装地帯は日本の具体的要求をまって解決する、しかし華北の特殊地域化は困難であり、賠償金支払いも能力的に不可能である、というようなものだった。

 日本側は、華北の特殊地域化を承認しないことや駐兵問題に触れていないことに不服だったが、それよりも「蒋介石の下野」が交渉開始の前提条件であると、七月八日の五相会議で確認した。近衛声明の面子にこだわり、「国民政府対手とせずという看板は、いますぐ降ろすわけにはいかない」というわけだが、三年後の日米交渉の際の米国側要求と比べたら、この国民政府申し出の条件は日本側に大変有利である。和平のチャンスであった(重臣たちの昭和史下巻70ページ)。


 所長のいう「良心的な通史書」とは細かく註をつけて典拠を明示し、読者の調査を助けてくれるものである。

 宇垣一成・孔祥煕工作は、和平仲介人の萱野長知の私的な予備交渉を含めれば、1938年3月末から同年9月末まで約6ヶ月の長期に及ぶものだった。
 しかし中村粲は、大東亜戦争への道第13章盧溝橋事件の真相第五節「惨!通州事件」(401~410ページ)に10ページも割いて1937年7月29日の通州事件を解説しながら、同書第16章「対支和平への努力」には宇垣一成・孔祥煕工作を一言半句たりとも書かなかった。すべて省いたのである。これは著しくバランスを欠いた偏向記述であり、極めて悪意に満ちた虚報の詐術であると言わざるを得ない。

 NHKドキュメントは軍部の暴走史観を成り立たせるためにトラウトマン工作をすべて省略し、NHKの偏向報道を批判し続ける中村粲の大東亜戦争への道(1990年初版発行)は防共史観を成り立たせるために宇垣一成・孔祥煕工作をすべて省略したのである。教員資格不用の大学教授という仕事は確かにいい加減なものである。

 公共放送と著名な歴史学教授がこのような情報操作を行っている限り、いつまで経っても我が国は敗戦後遺症をひきずり、反日左翼勢力と歴史無知な売国政治家の跳梁跋扈を許してしまうと知っている方は、ブロガーを奮い立たせる1日1押人気ブログランキングをクリック願います。
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posted by 森羅万象の歴史家 at 22:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 過去を旅する歴史コラム | 更新情報をチェックする
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